脳波測定研究が臨床心理支援にもたらしたもの [心理・健康]
かつて社会人院生として心理支援の実践をしながら心理・カウンセリングの研究を続けていたが、目に見えない世界をいかに顕在化させるかということに頭を巡らせていた。学生相談業務【5年半】クリニックの心理士【15年】の経歴もあるが、当初、常勤職として組織に所属していたわけではなかったため、機材の入手に検討を加えた末、選択したのが臨床脳波計の規格を備えた簡易型脳波計だった。今でさえPCと連動する3Ⅾ画像として映し出される脳波測定器は存在するが、当時は、連続測定に耐えうる脳波測定器を入手することは難しかった。そこで自ら入手した情報を元に脳波測定器を開発している会社を数社訪ねた。一社は、5分程度の測定時間の限られたシステムであった。しかし筆者の開発した脳波測定器は、簡易型であるが「経営の神様」と称される方が創設した企業に長年所属され、LSI研究の最先端事業と協力関係のもとで製作されたもので、Windowsで作動する固有のアプリケーションを利用すれば、PCで脳波の連続測定表示が可能であるといった画期的なものであった。他方、研究論文として信用性を担保するためには、現波形とアーティファクトを峻別するための基礎実験が必要だった。そこで、工学博士を保有する開発者及び製作者と研究室のメールで幾度となくやり取りをする中で、当時府中にある研究所を訪問する中で、原波計を抽出し、アーティファクトとの誤差を見極め、開発者に報告しお墨付きを得た経験がある。簡易型脳波計の精度を自ら確認し確信した上で、カウンセリング時の脳波測定を開始した。もっとも開発者の方から提供されたアプリケーションは、専らアルファ波(ファスト・スロー・ミッド)、シータ波、ベータ波を測定することでリラグゼーションに導かれている状態を自覚するバイオフィードバック装置であることから、さらに、データに混在する可能性がある筋電の数値、アーティファクトと現波形を抽出するために更なる改良のステップが必要となった。そこで製作企業の担当者に相談した所、簡易型脳波計から抽出した原波形を抽出しアーティファクトを除いた言わば純粋なデータをExcelファイルで変換する精巧なプログラムを作ってくださった。そのプログラムと連動し、構造化カウンセリング技法の有資格者の協力を得て、クライエントの了解のもと、某大学、カウンセリングルームで構造化されたカウンセリングプロセスでの脳波測定を行った。当時は、専らCDRWやMOという記録媒体を活用し大切なデータを保存して蓄積してきた記録が残されている。
その時、お世話になった開発者(工学博士)の方は、長く脳波の実践研究を続けてこられていた。「よかった」「ありがとう」という気持ちを体感する中で体感する自然「呼吸法」が、人間の心を一定の特殊な周波数に合わせ、「ドーパミン神経」を活性化するヒントがあるのだと表現されている。著書の表題では、「〇さまの周波数」という表現もされているが、内容は、まさに脳神経科学の書であり、長年の研究成果が凝縮された、言わば科学的に修練された「悟り」が記された著書でもあると解されるのである。人生を突き詰めていくとある時、異次元の知覚に辿り着くとも言われる。それは科学を超えた叡智の世界であり分析と統合を繰り返した末に感知することができる内容ではないかと思われる。
心理士の使命は、クライエントの主訴を受け止め共感と傾聴を軸に気づきや自己決定に導く中で心理葛藤を乗り越える契機を与えるとともにそのために心を寄り添うことが必要となる。しかし何故気づきや自己決定が生まれ、心理葛藤を乗り越える選択ができるのか、そして、認知行動変容ひいては、パーソナリティーチェンジが生起する瞬間をある一定の科学的な根拠をもって見守る姿勢が重要であると(自身は)捉えている。長年の脳波研究を「悟り」の科学に近づけ、人類に福利をもたらすことができるよう、そんな意気込みを痛感する銘著でもあると感じている。
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