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身体に触れる癒しと「禁忌」原則 【追記】 [心理]

心理療法の中には、身体に触れることで癒しをもたらすという考え方がある。しかしそれが他者である場合は、全く別の話である。


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【以下引用】

大学院での臨床研修のsupervisorとして心理支援する時も細心の注意を以て「非接触化」への環境調整に配慮した経験がある。法と倫理を背景とする様々な事情から困難が生ずる問題がある。仮に相手の同意を得たとしても、同性であっても、研修の中でもそれを用いることは困難であり「禁忌」であることが現時点での結論である。


 「人から存在を認められたい」、「他者から注目を浴びたい」「自分を信じたい」「他人を愛したい」という心の欲求が傷つけられたことで生ずる心傷感情の形成は、生育歴を遡れば、学童期に留まることなく乳幼児期、ひいては胎生期に遡る。人間の脳が形成された出生後はもとより胎生数週間で脳の一部が形成される。母体を通じて、感覚情報、感情情報が神経回路として形成され胎生記憶が作られる。胎生期の記憶は潜在記憶として脳に保存され脳神経回路を作る。

 乳幼児期、胎生期に形成された記憶は潜在記憶として、成長後、共通する鍵状況で、フラッシュバックする。今流行かけているポリヴェーガル理論の方々が言う「発達性trauma」と符合するものである。その心傷記憶は、自らの生き方を超えた心理環境に起因するものである。身体感覚として深く刻まれた記憶は、容易に癒すことができず、身体感覚に刻まれた心傷記憶を取り去ることができれば良いが、物事は単純に0進まないのが通常である。

 抑圧された無意識として身体に刻まれた記憶は、身体的エクササイズやゲシュタルト療法等を通じて気づきと変容に導く営みがされてきた。そこで用いた技法が効奏すれば、クライエントに身体的な気づきを含んだ癒しがもたらされ、次なる自己成長に向かうことが可能となる。しかし胎生期、乳幼児期に十分な生育のために必要な心理環境を与えられなかった場合、幼少期、生活の事情で触れる機会が無かった場合、重要他者から守られている感覚が欠如し、淋しさ、孤独感、不安感の中で自分が人として存在し続けることへの恐怖に苛まれることとなる。

 その孤独感、不安感をいやすためには、身体に刻まれた心傷記憶による恐怖をできることなら消し去る必要があるが、そのためには、「身体接触を通じて癒す」考え方がある。確かに、重要他者から距離化され自分の人としての存在を認められなかった過去がある場合には、身体接触による抱擁を通じたことが行われると効果は顕著となる。しかし仮に同意を得たとしても、心理支援の場でクライエントの身体に触れる行為が果たしてどこまで許容されるかここで省みる必要がある。

 自身が20年程前、大学の医学部や博士課程で行われた健康カウンセリング実習において、指導教官のもとでsupervisorとして心理支援した時においても、クライエントの語りから幼少期の記憶はもとより胎生期の心傷記憶が想起されそれを一定の時間の枠組みの中で癒す支援を行う機会があった。その中でどれだけ、クライエントの心が真に癒されるためには、「重要他者である保護者から抱擁されたとしたら、癒されるのだろう」と思ったこともある。しかし心理臨床の場では、法・倫理等の様々な観点から、「禁忌」であることから、クライエントのimage変容を促進するimage療法が有効であり、クライエントの心理ストレスを軽減するimage変容の支援を行うまでが選択の限界であるという結論に達し心理支援に参加した記憶がある。そしてそのためには、段階を経てimage変容に導く必要があるが、変性意識状態に導くために、催眠を応用することでその効果は促進された。


 クライエントの意識の変容プロセスは、自己成長への期待と妨げる感情として整理還元され、成長の動機づけを促進し自己成長心を育てるとともに、自己成長を妨げる感情=防衛心に気づき、それを和らげる支援を行うプロセスをたどる試みを基本軸に心理介入を行った。自己成長に向けたクライエントの建設的image変容に導くためには、クライエントの身体に一切触れることなくラポール(信頼)形成を保ちながらimageに臨床介入する。そのため変性意識状態に導くことが必要であるが、そのプロセスを単なる心理士の「感覚」ではなく、意識のプロセスを科学的に検証するために簡易型脳波測定器での脳波測定を行った。

 クライエントの抑圧化された潜在記憶にアクセスし、不安や孤独感、恐怖感を癒すためには、「相手の身体に触れる」方法を軽々と主張する心理士(師)がおられる。確かに時に顕著な効果がある場合もあるかもしれない。しかし言わばカウンセリング、心理療法の世界では、【禁忌(禁じ手)】であると言わなければならない。心理士(師)には、法律、倫理を含め、それができないことを熟知しているからこそ、日々、身体動作やimageを活用した心理技法、臨床心理技法、心理臨床技法に向き合っているのだと捉えるのである。



【追記】

 上記の投稿をし注意喚起していたが、心理士を名乗る元大学教授が逮捕されたという報道があった。

クライエント【20代女性】の心痛は如何許りの事であったであろう。社会福祉学を専門とする元大学准教授で科研費で論文を共同執筆しNHKでも報道された経歴がある。共同執筆者や紹介者の信用も失われるばかりか、資格の信用を根底から揺るがすことになる。今後、心理士(師)は、倫理規程及び法規に従い、細心の注意を以て心理面接を行うことが求められる。それに加え、共同執筆者、翻訳者の選定まで過去の行いを調査して選別する必要がある。訪問していた精神科クリニックにも与える影響は計り知れない。




 資格を付与した団体は、クライエントへの対応と速やかに登録を抹消し資格の信用を取り戻す必要がある。

 クライエント、関係者の方への謝罪は刑事・民事法廷で行うことになる。



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