「君たちはどう生きるか」再考ークライエント・心理士が直面する倫理- [学び]
『君たちはどう生きるか』集中講義 こう読めば100倍おもしろい (幻冬舎新書)
- 作者: 浅羽 通明
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2018/11/30
- メディア: 新書
映画「君たちはどう生きるか」が公開されたことを知った。
相談室である時、クライエントの方から、この夏に推薦する書物に関して質問を受けることがあった。特にこの夏にということではないけれども、倫理をテーマとして生きている方に、「君たちはどう生きるか」を推奨する運びとなった。思えば、ここ数年、倫理をテーマとした発問をされるケースが増えてきた。15年以上前に向き合った大学生も、高校生も、思春期の子供達も、日々、こうあるべき自分との葛藤の中で生きているという実感がある。倫理をテーマとした問題を提起するクライエントに向き合う時、いつも人として誇らしいという感覚を抱くことがある。そして、そのクライエントのために自分ができる心理支援を行えたらと思う。
思えば、自身が心理士(師)を目指すようになったきっかけは、学生時代、友人の下宿で紹介された吉野源三郎先生の著作を読み、おじさんとコぺル君とのやりとりを読んで、自分もコぺル君に語り掛けるおじさんのような存在になりたかったかもしれない。あの当時、「君たちはどう生きるか」に触れたのは、岩波文庫の青版だった。当時はあの本しかなかったと記憶している。その後、時代は、昭和から平成、令和にうつり、色々な機会に再版されたり、漫画版が出たりしてきた。そしてこの度、アニメで放映された。
機会があれば、自分も観たいと思うが、今は、予約も取りにくい状況とも伺っている。アニメでの宮崎作品を待ち焦がれていた方々も多くおられるだろう。しかし学生時代の友人から差し出され、一気に読み終えた時の感動は他ならぬ、吉野源三郎著の「君たちはどう生きるか」であったことに変わりはない。できれば、あの瞬間の感動を歪められたくないと思い、楽しみに心理的距離を置いている状況である。
倫理の問題に直面し苦悩するクライエントを何とか自分の心理臨床技術でそれぞれの本当の自分に導くことができたらと思っている。クライエントの方の真剣な眼差しを想起すると、存在を誇りに思う。どうか辛く厳しい人生を最後の最後まで生き抜いてこの世の中での御自分の生きざまから、存在を証明して欲しい。
『君たちはどう生きるか』著者の実像 戦後平和主義の戦略家・吉野源三郎 (中央公論 Digital Digest)
- 作者: 佐藤卓己
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2018/05/25
- メディア: Kindle版
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230706/k10014119971000.html
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