自律訓練法 施行時の脳波測定 【追記】 [心理]
自律訓練法時の前頭部脳波を測定した。
臨床家のための自律訓練法実践マニュアル──効果をあげるための正しい使い方
- 出版社/メーカー: 遠見書房
- 発売日: 2015/01/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
1)心身の調整法に自律訓練法がある。古くドイツのシュルツにより開発されわが国でも解説されている。自我状態が不安定なクライエントに不眠症状があり医師から薬を処方された方がそれでも入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒等の症状が消えないと訴えたため、クライエントを通じて医師の了解を経て、自律訓練法を背景公式から教示し、何とか眠れるようになったというケースがあった。もっとも以下健常者のケースを分析する。
2)自律訓練法施行時の前頭極(FP1-FP2=前頭部額の2部位)の脳波を健常者を被験者として安楽椅子姿勢にて測定した所、測定当初は、専ら額の電極に注意が向いていた様子で、筋電計で示す値は高く、心理的にも過緊張状態にあると解された。脳波測定においても、瞬目、体動等が顕著にみられ、脳波成分とは異なるアーチファクトが多く検出した様子がグレー(灰色)で示されていた。しかし背景公式を再度教示し「気持ちが落ち着いている」とクライエント自ら唱えていると、筋電図に示す過緊張は解れるとともに青色で示されるシータ波成分が観察された。図をよく見ると、概ね10HZの成分=ミッドアルファ波(黄緑色)から5~7HZのスローアルファ(水色)が観察され、その延長線上に4HZ付近のシータ波(青色)が顕著に見られるようになった。
背景公式を繰り返した5分間の脳波成分の詳細分析は、ベータ波が7%、アルファ波が61%、シータ波が21%を示していた。中でもミッドアルファの成分が33%、ファストアルファの成分が8%=41%であり、背景公式を呟いている間、自律訓練法施行者の意識状態は、微睡の中で微かに意識を保っていたとみられる。
3)重感公式=「右(左)腕が重たい」の瞬間の前頭極脳波を測定し、観察した所、赤色を示すベータ波成分が徐々に現れ始めたが、5分間のデータによると、ベータ波成分は12%に対して、アルファ波成分は52%、シータ波成分は、22%を示した。心理的緊張度の指標という点では、74%がアルファ波+シータ波成分の合計であり、7%~12%のベータ波成分の増加(比))と比較すると若干の心理的緊張が増加する方向に切り替わったと推察された。
4)あくまでも仮説であるが、背景公式「気持ちが落ち着いている」は、クライエントの意識においてストレスとして認知される程度が相対的に低く、重感公式「右(左)腕が重たい」は、実際に手や足が重くなる感覚を体感することで、クライエントにおいて「負担感」として認知される程度が異なり((思い通りにならない)ストレスとして認知された結果、その違和感が心理的緊張としてベータ波帯域が増加することで反映されたのではないかと現時点では、捉えている。
5)背景公式(5分間)から重感公式(5分間)に移行する中で、クライエントの意識は、弛緩集中状態に導かれ、意識の覚醒度を保ちつつ、変性意識状態に導かれたと推察される。確かにベータ波成分の増加は、健常者(クライエント)が重感公式を唱えることにより、ベータ波帯域が見られたが自律訓練公式を唱える過程でより深い心身の弛緩に導かれるためのプロセスとして解釈することもできるのではないかと現時点では推察している。
以上の治験を踏まえ、折に触れ自律訓練法時の脳波測定を継続し、法則性の一端を把握できればと思う。
【追記】
6)温感「両手・腕・脚が温かい」
温感練習は、「両手・両足、両腕、両脚」を対象に実施した。5分間のプロセスを見ると、各帯域から脳波の波形が出現しているが、特に、測定開始後概ね1分程で筋電図(EMG)が22ポイントまで低減した。前頭部リラグゼーションを体感し「温かい」言葉を繰り返し唱えていると、アルファ帯域が55%(ファストα=6%、ミッドα=35%、スローα=14%)、シータ波帯域が25%、ベータ波帯域が9.0%を示した。
開始1分後、測定器装着時の前頭部、耳部の違和感が軽減したのか筋電図の大幅な減少に影響していると推察されるが、脳波比較グラフを観察すると、同時にシータ波帯域が高振幅を示するとともにベータ波帯域、ミッドアルファ帯域の脳波がいずれも高振幅で出現している。「温かい」という温感の教示を繰り返した結果、質的な生理学的変化をもたらしたのではないかと推察する。その直後から低振幅のパワースペクトルが各帯域から出現している。測定開始後4分程でシータ波帯域優位からスローアルファ波が出現し測定終了時1分間には、ミッドアルファ波のパワースペクトルが顕著に出現していた(3Dグラフ参照)。
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