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コンサルテーションを受けようとする基本姿勢の差 [心理]

心理士(師)の元には、自発的にカウンセリングを受けに来られる人に加え、専門職がコンサルテーションを受ける人もおられる。しかし速やかにお見えになる方と、重い腰を上げてようやく来られる人、もしくは、クライエントのみならず指導者御自身の健康状態が著しく悪化しても来ることができない人等々、様々な人々が存在する。


公認心理師のための協働の技術: 教育と産業・労働分野における工夫

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みんなのシステム論 対人援助のためのコラボレーション入門

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学生時代、数学や理科、その他の科目も分からないことがあれば、知っている人に聞きに行くとその後の学習は、スムーズに展開する。もっとも始めから正答を聞くよりも、ある程度自分の知識を土台に考えておくと基礎力の確認に加え応用力が育つので、更に効果的である。そこで、自分のノートをまとめた後も、時にぎりぎりまで考える人もおられる。結果的に自らの力で正答に導ければ良いが、そのためには、膨大な時間がかかり、大きな負担を抱えながら乗り越えていくプロセスを歩むこととなる。

 

 そこで、結局は、解法を理解したら、より速く正確に正答にたどり着く力をと準備できると良い。それにも関らず、あえて試練の道を歩もうとする人がいて、あたかも自我意識が傷つかないように大切なことを聴くことを妨げる人もいる。そして、結局正答にたどり着かないまま、解決できないストレスを抱えている人も存在する。

 その人が仮に子供であれば、自分自身が本番の試験で解けないだけで済むかもしれない。しかしながら、指導者である大人であれば、以後、関る様々な人のために、誤解を伝達することで、迷惑をかけることになる。自傷行為や身体の症状を伴うものであれば、当初の症状を悪化させてしまうことにもなりかねない。

 その意味で、心理士(師)は、初期対応を誤らないように、御自分のプライドを乗り越えて速やかにコンサルテーションを受けにお見えになる指導者を偉い方だと思う。重要かつ緊急のケースであれば、尚更である。訪問した直後、始業時刻前に呼び止められ、コンサルテーションを行うことがその例である。それに対して、心理士が訪問しているにも関わらず、さんざんにして解決に至らないストレスを抱えたまま、自分の力で最後まで粘り続ける指導者もおられる。しかし知識が浅いまま初期対応の基本に誤りが出た時、クライエントの心と身体に致命的な影響を与えることになることが往々にしてある。そして、クライエントが御自分の力で苦しみ抜いた後、ようやく心理士のもとに訪れる場面は決して少なくはないと感じている。

 しかしながら当初から自分の迷いを消すために速やかに心理士の元を訪れる指導者は、安心感を抱きながら余裕を持って解決に導くことができるのに対して、いつまでたっても確認すらしない似非指導者は、結果的に解決のための絶妙なタイミングを逸してしまう傾向がある。驚いた話だが、心理士の不在時、常勤の相談担当者に心理士から教えて欲しかったとぼやく指導者もおられるという現実もある。それは、予約もなく連絡をする約束もしてないのに連絡を待っていたと言い逃れをするクライエントに似た要素がある。いずれにせよ、指導者としての自尊心が傷つかないように時に誤った道を選択してしまう専門職の弱さなのだと感じるし、クライエントよりも指導者自身の心を守りたい思考方法の表れと解される。

 

 コンサルテーションを速やかに受ける専門職の潔さは何をもたらすか。鍵は、心理士(師)の守秘義務(法41)を念頭に置き考える必要がある。法が規定する守秘義務は、刑罰により守られている。そのことを踏まえれば、正当理由を根拠にしても心理面接の過程で、知りえたクライエントの守秘事項を、態々、担当する指導者の元へ出向いて開示に行くはずがない。そうしてくれている相談担当者もいるという本音があったとしても、刑罰に守られた守秘義務の重さを心理士(師)として、心から自覚する必要がある。その道が心理職としての信用を守る道でもあることに加え、クライエントの心の自由を守ることにつながるからである。そこにおいて、最低限必要なことは、組織の最高責任者には、最低限の情報は、他ならぬ組織とクライエントを守るために相談のアウトラインと今後の支援方針を伝えておく必要がある。それが法に規定された正当理由を厳格に解した結果である。

 

  過去、驚いた記憶は、常勤の相談担当者が心理士(師)から直接、クライエントを担当する指導者に伝えて欲しいということがあった。ことの成行きは、当初常勤の相談担当者に口頭で概要を伝えたものの、今度は書面化して欲しいと言われ驚き、率直に呆れたことがあった。口頭で伝えるのは、時間を短縮しポイントを組織に伝えるという意図があったが、結局は、その時間が無駄になったと感じた。すると、当該常勤者に伝えたこと自体、意味がなく、直接、組織の責任者にアウトラインを伝えた方が、クライエントへの守秘義務をできるだけ漏らさないこととなると感じた。しばらくはそのようにしていた所、今度は心理士(師)からクライエントを担当する指導者に口頭で直接伝えて欲しいという依頼に変わった。しかし面接枠は、一日の訪問時間一杯にスケジューリングされていて食事休憩を5分程度ととれたとしても、次の面接までの昼休憩の合間に他の指導者のコンサルテーションを求められたり、電話対応をすることが必要となったり等々、人としての身体的健康が危ぶまれるようなスケジュールを組まれることがある中で、限られた時間で最高責任者に最低限伝える記録を残すことが求められる等守秘義務の扱いとして誠に難しい場面に直面したことがあった。当初は、噛み砕いて責任者にポイントを伝えたが、他職種との連携のために書面化して欲しいと告げられ口頭説明が半ば迂路となった。

 ここで大切なことは、組織の守秘義務を預かる責任者が心理の知識と(できれば資格)を有するコーディネーターに訪問心理士(師)とクライエントを担当する直接の指導者との仲立ちを依頼することと顧みる。そもそも、常勤の相談担当者は何のために存在しているのか。訪問心理士(師)の口頭説明を瞬時に理解して各指導者はもとより組織に伝達する力がなければ、意味がない。一体貴方様は、何のためにここにおられるのかと咽喉元まで出かかったことがある。もっとも、有資格者で仮にGルート研修生である場合、既成の知識が邪魔をして独自の思い込みにより、訪問紳士(師)の心理支援が事実上無駄になるよりもまだましかもしれない。

 いずれにせよ専門職が自発的にコンサルテーションを受け、訪問心理士(師)と連携する勇気ということは、心理士(師)の守秘義務と、クライエントと自らが所属する組織を本当の意味で守ることにつながることを自覚する必要がある。特に最近のお若い指導者は、相談担当者が御自分の席にまで足を運んで情報を得ることができないと自ら重い腰を上げて、クライエントを守ろうとしない。隣の席にいたとしても同様で双方向性が保たれない方が多くなった。他方、ベテランの指導者の中には、自らどうしようもない場面にまで追い込まれて御自身の自尊心を守る防衛機制が働くため、時に不遜な態度で接してくる人もいて、クライエントを守るために心理士(師)の職務を遂行するが、心が晴れ晴れとした中で対応できれば幸いである。

 

 尚、複数の心理士(師)が訪問する先で面接室を使用するケースがある。訪問回数が少ない心理師がいる場合には、その方に配慮して面接室の使用を許容する場合もある。しかし、常に当該心理師を優先的に面接室の使用を許容すると、定期的に訪れる心理士は、心理面接を生業としているために、その時間はどうすれば良いのであろうか。その面接室の使用を許すためには、複数の面接室の使用ができるように調整する必要がある。特に身近な相談員がいる場合には、その配慮が必要であるが、仮に公認心理師の有資格者の場合に、一方の心理師の業務を持続的に妨げることとなると、多職種との連携義務違反(42条違反)となり、公益通報の対象となるので要注意である。


  自発的に専門家の教えを請うてでもクライエントのために動こうとする指導者が少ないこと、自発的に教えを請おうとしても、態度が不遜である指導者が稀に存在すること、コンサルテーションをして解決したと誤診した後は、一切経過報告を心理士(師)にしない人が多いこと等々を踏まえた時、心理師法における罰則を伴う規定は、多職種との連携の上で、これほどまでに融通の利かない状態を導き出していることを顧みると、率直にクライエントのために法律が制定されたのかと思うと速やかに同意することは難しい。もっとも指導者が心理士(師)が担当していた心理教育の講義を引き継ぐ際に、コーディネーターの方が指示的な態度で、始めてだから指導者にポイントを指導してほしいと言うのは、論外の対応であることに気づく必要がある。態々何年も苦労して心理士(師)が積み上げたスキルをその新規担当者の元まで行って助言することなどあり得ないからである。新規担当者の方にも自尊心はあるであろうし、受講生のことを思えば、自発的に質問に来るのが当然なことだからである。心理士(師)が生き生きと活躍することでクライエントが救われるのは、コーディネーターの手腕に懸ってくる。それは過去の優秀な女性担当者の方を想起すれば明白と率直に振り返る。


自尊心泥棒―子どもを理解できない大人たち

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若年指導者の退行と回避性行動パターン:岡ちゃんの心のつぶやきノート:SSブログ (ss-blog.jp)

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