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心理師の面接時間枠 [心理]

心理師が訪問する場所では、面接の時間枠の目安が決まってくる。時に通常の時間枠を変えて欲しいということを求められることがある。しかし基本的な枠組みを変えてはいけないと考える必要がある。


SCID-5-RV使用の手引き: DSM-5のための構造化面接 [評価票ダウンロード権付]

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  • メディア: 単行本
面接技術としての心理アセスメント-臨床実践の根幹として

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  • 発売日: 2018/08/06
  • メディア: 単行本
来談者のための治療的面接とは──心理臨床の「質」と公認資格を考える

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心理師が訪れる訪問先には、医療、教育、福祉、産業など様々な場所がある。その中で観察が中心になるか面接が中心になるか、またアセスメントのための心理査定が中心になるか等様々である。しかし、心理師によっては、その面接の枠組みを軸とした職務遂行の形がある。概ね1日のスケジュールの大枠を決め、それに沿って対応することで、全体の心理師の仕事のバランスが取れるからである。それはあくまでもスケジュールを遂行する心理師が決定すべきことであり、当該訪問先の管理職だからと言ってみだりにその心理師の判断に容喙すべきではない。

 一番困るのは、他勤務の日にスケジュール調整の確認のための携帯着信があり、時間を置いて返信しているともう電話の相手は、出張していないと回答が返ってくる。次の訪問日までは間があるため所属長の所にメールを打つと、更に次の日に当の相手から着信がはいり対応を迫られる。その内容も面接の時間の希望者への対応のために訪問時間の枠組み自体を変えて欲しいと無理難題を言ってくることがある。時に若手の心理師は、イイ子行動特性が影響してそれに従ってしまう人もいるかもしれない。しかし面接時間の枠は心理師が訪問日の中で設定するものであって、それに対して調整の希望をすることがあっても、心理師の自由意志を抑圧する形でスケジュールを変えようとするのは、まさに強要(刑223条)に該当する行為である。心理師を支配していると自ら錯誤に陥っている管理職や担当者は、他勤務日に当然のように連絡を求めてくる人も存在するが、それは全くお門違いである。ましてや心理師との合意のもとに決定してきた時間枠を一時の状況変化のために替えようとするのは、組織の大きな驕りでもあり個人の意思決定を制圧しようとする違法な行為に他ならない。

 先ず心理師に連絡する前に組織内でCLの状況を捉える会議を開く必要がある。その時間を惜しんで心理師に丸投げするのは如何なものであろう。いつもそのようなスタイルをとっているならば致し方がないが、年末になり上位機関に報告しなければいけない時になって、初めて担当者の手に負えないために心理師に丸投げしてくる場合、組織の継続的判断に基づくものでない、一時的な判断のために、訪問する契約の時間の枠組み自体を一方的な意思表示により変えることを心理師に呑ませようとするのは、如何なものであろうか。

 心理師はその人によって対応するリズムがある。そのリズムを単なる一時的な訪問先のニードに添う形で崩してしまうと様々な所に影響を及ぼす危険がある。当該クライエントをかける担当者が心理師に相談の一つ持ち掛けたことがない場合には、先ず、内部で話し合って心理師に経過の記録とともに自ら来談する所から始めては如何だろうか。心理師は、訪問先のニードには寄り添う必要があるが、驕り高き訪問先担当者や管理職のニードは、ここから先は駄目ですと静かにNOを伝える必要がある。仮にそれが不利益取扱いにつながるのであれば、記録を残しながら、公益通報する機会をつくることで一定の効果が得られると解される今日この頃である。

 特に医療機関や教育機関では、それほど継続的に訪れたことのないクライエントのために心理検査受検を求め、心理検査の結果を短期間で求める人がいる。心理師が自己決定したスケジュールに介入し、通常1か月かかるスケジュールを短期間で求めるように、ただ速く結果を求める人もおられる。しかし心理師自身が決定したスケジュールに容喙して大幅なスケジュール変更を求める行為は、組織においては、労働施策推進法(パワハラ防止法)における過大な要求であり、強要(223)に該当するばかりか文字どおりパワーハラスメントに該当し公益通報事由となることを忘れてはならない。


2020年6月施行「パワハラ防止法」に完全対応 管理職のためのハラスメント予防&対応ブック

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【追記】
 これまでに首を傾げた体験の一つに、継続的な心理面接を訪問先で行っていた中で、心理師として継続面接の予約を受け翌々週に来談して戴く予定となった。しかしながら定刻に始めることを知りながら他の相談員が一方的に心理師の予約を入れてしまった。時間が重なっていることを気づいた相談員は、心理師が予約を設定し来談者が訪れる予定のクライエントに無断で電話を入れ、時間をずらしてもらう申し出をしたという事件である。これは、心理氏(師)有資格者として20年近く継続する中であり得ない出来事であり愕然とした事件であった。そもそも予約の約束をしたのは、心理師と来談者であり、以下に組織の要請があったとしても無資格の相談員の独断で予約の時間を一方的に変える連絡を来談者にすること自体、心理師有資格者の発想ではあり得ない判断である。このようなことがまかり通るならば、心理面接の構造化等遥か彼方の世界にあると痛感した記憶がある。
 面接の構造化を無視する営みの背後には、構造化された面接技法が存在しないか、習得してないことに由来する。その結果、クライエントの来談当初、心理師の力を借りて心理介入してもその後、構造化を崩される営みが続いたのでは、クライエントの行動変容や自己成長が安定化することは難しい。心理師有資格者の世界では先ずあり得ない悪しき思考である。


【追記】

尚、訪問先によっては、Counselingという文化が定着していない所もある。「指導」や「教育」という名の下に教えることに重点を置き、語り、傾聴、共感し、気づき、成長するというプロセスが理解できない所もある。coordinatorが先ずそのような所では機能していないし、打てば響くといった双方向性が成立しない。そのような時には、心理教育を含めた活動に切り替える必要がある。当然にして待機時間はそのための制作や文献検索も含まれてくる。心理師を活用できるか否かは訪問先のCounselingに対する理解と双方向性を齎す人間性にもよると解される。打てば響かない所には、Counselingの高等・大学教育を受けられた御経験のない方に取り急ぎ心理教育の情報提供をして置けば良いのではないかと思われる。



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