基本イメージのゆらぎ [心理]
CLの日常生活行動への注意集中を妨げる要因には、いくつかの要素が存在する。
ネガティヴ・イメージの心理臨床: 心の現代的問題へのゼロベース・アプローチ
- 作者: 松下 姫歌
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 2021/10/18
- メディア: 単行本
その中でも自己や他者、ひいては、生命感覚に対する基本イメージのゆらぎである。そして、基本イメージのゆらぎを安定化するアプローチには、いくつかのプロセスがある。CLが過去の生命危機に関わる接死体験により、自己や他者に関する基本イメージが揺らいでいる場合、日常生活行動の安定化に向けて、行動(療法)的アプローチからスタートすることがあるが、一定の段階に行くと、限界点に直面する。その限界点に直面した時に、技法を認知やイメージに焦点を当てていく方向に転換しないと、基本イメージを安定化させることは難しく、半ばもう一人の自分と解離している状態が続いたまま、日常生活行動を営むことになる。そこにおいて、通常の生活を続けていることができればよいが、時に、過去に瀕した生命危機体験がフラッシュバックしたり、他者に対する罪意識がある場合、無理な要求水準を設定しようとする方向に心が働くことにより、それが達成されないことによる自己否定感や無力感が繰り返し、心は疲弊してしまう。罪意識や自己否定感につながり、希死念慮を抱いている場合、待ちの姿勢だけでは、生命への危険を伴う恐れが出る。積極アプローチを進めるためには、従来の行動(療法)では、解決困難な状態を繰り返すため、「基本イメージ」を安定化し、生命感覚に関する「自己効力感」を確保しないと、CLは次のC/Gのステップに移行することは難しくなる。脳科学的には、大脳辺縁系の扁桃体にフラッシュバックを生起する回路が形成され、海馬が疲弊しているため、日常生活行動への注意集中が困難になる。CLを生命危機の恐怖から守るためには、CLの求める心の状態に応じた技法に切り替えていく視点が重要である。枠を守ることに固執すると、CLが生命危機に曝される事例もある。接死体験による防衛機制の表れとしての解離状態にCLを曝し続ける状態から守るには、固有のプロセスを見極め進む必要があるが、先ずはCLの生命を守ることが先決である。
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