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別離体験がもたらす対人形成「無力感」連鎖 [心理]

   人生の中で出会いもあれば別れもある。重要他者との別離は、対人関係形成力に向けた自己効力感、自己肯定感を著しく低下させ、時に無力感に変わる。その無力感が家族の世代間伝達により強化された時、その後の世代にも無力感が再伝達されることになる。結果、引きこもりの子供が再生産される場合がある。かつて、その昔、そのような内容がケースカンファレンスで報告されることがあった。

無気力な青少年の心―無力感の心理 発達臨床心理学的考察 (シリーズ 荒れる青少年の心)

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無気力の心理学 改版 やりがいの条件 (中公新書)

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 重要他者との別離を体験すると、悲しみに打ちひしがれる。その悲しみが癒されないままで、心理的防衛機制が働き、代償行動に至る。悲しみに打ちひしがれる中、その姿を見る家族にもその無力感が伝播される。子供や親兄弟がその例である。近親者の中で、その伝播された無力感に打ちひしがれた子供や親兄弟に対して、率直に感じることは、可哀そうだという感情がその例である。可哀そうだから、何とかしてあげなければならないと思い、その悲しみを代わりに取り除く行為に至るようになる。無力感に打ちひしがれた家族は、自分の力で無力感を乗り越えることができず、自発的な自己決定行動が生まれていかない。父母がそのような状態であると、背中をみた子供は、惨めな姿に時に八つ当たりを繰り返し怒りを投げかけ続ける。別離体験をした父母にとっては、別離という結果に導いたことへの罪意識があるため、子供に対する指導力や発言権を放棄することになる。その状態に見かねた近親者は、例えば祖父母という立場の方がそのような状態を何とかしなければならないと錯覚し、別離体験をした父母の自己成長の機会を失わせる。可哀そうだから変わりに何とかしてあげるという不適応行動が繰り返される。別離体験による無力感が世代間伝達を繰り返したことにより生じた家族の姿である。ここで一番省るべきことは、誰の成長のために支援するべきかを確認することである。別離体験に基づく無力感を乗り越えるために自己成長の選択をせずに代償行動を繰り返す母親(父親)は、結局は、その背中をその娘(子供)に向けることになることから、親の背中を見て子供が代償行動を学ぶことになる。それを習得した子供は、当たりやすい人に当たり、攻撃行動に出る他、甘えることができない人に対しては、引きこもる行動を選択する。後者に対しては、自己の要求に気づき、適切に主張するスキルを学ぶ建設的な気づきが得られれば幸いであるが難しくなることが往々にしてある。そうなると家族の世代間伝達の鎖を切ることは難しい。しかしながら、その世代間伝達の鎖を断ち切る必要がある瞬間が訪れる。心理士(師)に加え、socialworkerとしてもその時を手繰り寄せるようにして機会をみて決断を下す時がくる。それは心理士(師)やsocialworkerのためだけではなく、組織のためでもあり、ひいては、当該別離体験による無力感に打ちひしがれた方の家族を守るためである。但境界性人格障害の支援は最優先されるべきものではないとケースカンファレンスで答えた経験を今再度、振り返った。

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