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ベーシックエンカウンター 再考 [心理]

丸椅子でベーシックエンカウンターを実践した時のことをふり返り再考した。


エンカウンター・グループ―人間信頼の原点を求めて

エンカウンター・グループ―人間信頼の原点を求めて

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2022/10/02
  • メディア: 単行本
ロジャーズが語る自己実現の道 (ロジャーズ主要著作集)

ロジャーズが語る自己実現の道 (ロジャーズ主要著作集)

  • 出版社/メーカー: 岩崎学術出版社
  • 発売日: 2005/07/29
  • メディア: 単行本
カール・ロジャーズ カウンセリングの原点 (角川選書 649)

カール・ロジャーズ カウンセリングの原点 (角川選書 649)

  • 作者: 諸富 祥彦
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/03/24
  • メディア: 単行本

パーソンセンタード・アプローチの挑戦:現代を生きるエンカウンターの実際

パーソンセンタード・アプローチの挑戦:現代を生きるエンカウンターの実際

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2011/03/19
  • メディア: 単行本
エンカウンター・グループ―人間信頼の原点を求めて

エンカウンター・グループ―人間信頼の原点を求めて

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2022/10/02
  • メディア: 単行本

ベーシックエンカウンターの原型は、その昔、友田不二男先生が主催されるグループで参加したことを記憶している。今から20数年前だっただろうか、ある夏の日、千葉の合宿所に、購入したばかりのロージャスの訳本を抱え、とある車で連れていってくださった。初日から20人位の方々が集まり、輪になって顔を突き合わせ、沈黙の儀式から始まる。その沈黙は、30分続いた。こらえられなくなった私は、今日は何の勉強会ですか?と皆に問いかけた。それでも、皆さんは、沈黙していた。訳本を手に勉強会をしましょうとさらに声をかけたが、応答がなかった。突然、ある方に喰ってかかった。私のほうが、あなたよりCGを知っている。少なくともあなたよりも…と。すると、友田先生は、私のほうをみて、静かに諭した「4級の将棋指しが10級の将棋指しを攻めてどうなる?」と。一瞬、私の目の前に閃光が走った。そして先生の目をみると、怒っていたわけではなく、とても優しい目をしていた。その時先生の言葉が全身に広がり、「申し訳ありませんでした」と頭を下げていた。その時、胸の奥から抑えていた気持ちが堰を切ったようにあふれ出て、涙があふれた。そんな私の姿を見て、友田先生は、静かにうなづいていた。「うん。うん。」と。

 この時、本当の心の師に出会った気がした。その時以後、様々な先生に出会っていろいろな技術を学んだが、あの時の体験がCounselingの原点だったのだと今でも思う。

さて、その時のエンカウンターから出発して、相談室の中で構造化した出会いの機会に導いた。短時間で児童生徒の気づきと自己成長と行動変容に導くためには、構造化しなければならない現実に直面する。スクールでは、必要な知識を児童生徒の心に寄り添う言葉をかけながら、グループの中で注意を焦点化させるように構造化させていく。3人以上そろえば、グループは成立する。さすがに集団精神療法の場では、それぞれの病態水準が異なり、特に深い症状がある方もおられるため、本当に慎重に進むことが必要になるが、比較的健康度が高い児童生徒に対しては、コミュニケーションに焦点を当てたテーマで言語と非言語のメッセージの説明から進めていくと、とても興味深く聞いてくださった。その中で、互いの気づきの中から大きな気づきが訪れ、今までの見方が一瞬の間に生じた思い込みだったことに互いが気づいた。あの瞬間は、参加された皆さんに忘れられない体験だったと思う。導かれた気づきは、幼少期のある瞬間にとらえた気づきが自分の思い込みになり、あたかもフリーザーで瞬間冷凍された氷のように記憶が固まってしまったということだった。そしてその記憶へのこだわりにより、自分の行動がある時、固まってしまったということに気づいた。

 その時参加されたみなさんの中に共有した気づきが訪れた。しかし厳密に言うならば、その気づきは、自分独自の過去経験に基づく固有の気づきであって、それぞれの気づきがファシリテーターの導きを媒介として、同時に訪れた気づきがあたかも集合の円の重なりのように重なりあった瞬間に過ぎない。なぜなら、各自の認知の枠=内部的照合枠は、それぞれの生体が持つ過去の経験にうらずけられたものであって、それぞれ異なる体験だからである。

 相談室の中で身近な相談員の方が時に、安易に会話を重ねていくときがある。全体を取りまとめようと声をかけるが、それぞれの方がそれぞれの方向を向いているため、心が重ならず、感情を共有することができない。私の持論では、グループの体験は、心理臨床経験の浅い段階では、行うことは危険だと思う。なぜなら、参加者の中で病態水準、心の健康度や自我意識の強度が微妙に異なり、その微妙な違いを図ることが難しい方が、いかに相談室の生徒が増えたからと言って、軽々とグループファシリテーター(促進者)のつもりになって自分があたかも主人公のような幻想に陥りながら介入してはならない。特に病態水準の重い方は、病理を深めてしまい入院治療を要する病状が反復したり、自我意識の統合が改善された生徒も統合が難しい状態に戻り、その状態をまだ治っていないと指摘する発言がみられる時、そもそも、民間資格の取り立ての身近な相談員さんが、心理臨床訓練の浅い状態の中で、特にグループでの体験が希薄な中で、逆転移を起こしながらそれに気づかず、転移感情の処理も誤り、セオリーを逸脱した介入を続けたからなのではないかと率直にご指摘申し上げなければならないケースが時折ある。職務経歴をみると数年の経験があるが、その中では、ほとんど、心理介入した経験がない内実がある場合もある。そのことを忘れて、スーパーバイザーも不在の中、知識もつぎはぎだらけで、ご自分の主観的な直観で、相談室運営を続けているうちに、せっかく改善し、自己成長を遂げてきたプロセスがある日突然、崩れていく瞬間が訪れる。

 グループ体験では、心理臨床訓練と経験、そしてできれば資格が必要である。しかし、お金を払えば更新させてくれる資格や、主宰の方の主観的な承認がなければ通らない試験は、害あって利なしという表現が当たるのではないかと体験的に感じている。今思えば、ある夏の日に参加させていただいたベーシックエンカウンターが私の心の中で燦然と輝いた体験になってよみがえってくる。過日の参加者の気づきとセッション後の笑顔、グループ体験者が寄り添って帰路に就く姿を拝見したとき、Counselorの資格は、クライエントに戴きなさいという友田先生の言葉が身に染みて胸が熱くなった。今は遠い天に召された先人の魂に心から感謝申し上げます。

 論文「真空における人格変化」を絶賛しながら、所詮、この世界は「かりの宿」と講義をしてくださった友田先生の笑顔がふと、想起された時、Counselingの原点に引き戻して下さるような気がする。それにしてもあれから30年の年月が流れた今は何級のCounselorに近づけただろうか?

これが私の真実なんだ―麻薬に関わった人たちのエンカウンター・グループ

これが私の真実なんだ―麻薬に関わった人たちのエンカウンター・グループ

  • 出版社/メーカー: コスモスライブラリー
  • 発売日: 2008/03/01
  • メディア: 単行本

ロジャーズが語る自己実現の道 (ロジャーズ主要著作集)

ロジャーズが語る自己実現の道 (ロジャーズ主要著作集)

  • 出版社/メーカー: 岩崎学術出版社
  • 発売日: 2005/07/29
  • メディア: 単行本


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