心理検査結果のフィードバック効果 [心理]
心理検査施行の基本は、説明と同意=インフォームドコンセントである。事前事後の説明が顕著な効果をもたらす要因となることを知るべきであると感じたエピソードがあった。
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心理検査を支援に繋ぐフィードバック―事例でわかる心理検査の伝え方・活かし方[第2集]
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.心理検査の後、どのように生かされているかと福祉系心理職の有資格者から聴かれたことがあった。心理検査を行った後、時にインファームドコンセントの観点から、事前・事後の説明を行うが、事後の説明後、どのように組織の中で生かされているかと問われた。症状や障害の程度により異なるが、比較的軽度のクライエントには、心理検査のフィードバックで終わる時がある。そして過去に心理検査を施行したクライエントの後々の行動を伺うと、元気でやっていて、後戻りのない生活を歩んでいるという答えが返ってくるケースが多い。その時にどのように生かされているかとう質問が生じるのは、少し的外れなケースもあると感じた。即ち、心理検査を施行し、フィードバックを行う中で、心理士(師)のメッセージがご本人はもとより、保護者、周囲の支援者に真意が伝われば、そのフィードバックされた内容を踏まえ、実行に移そうして日々努力していることが分かる。その後、心理検査の受検者のクライエントが他の方の支援者になっていたりすると、検査のフィードバック自体が、クライエントご本人の特性を捉え、現実生活に適応していると実感する。どのように生かしているかという質問自体不要になってくる。即ち、心理検査のフイードバックの内容がクライエントの自己理解を促進させ認知行動の変化に導く場合も往々にしてある。
心理検査の内容を理解せず、フィードバックがもたらす力を過小評価している研修生の方にありがちな思考であると省みる。修士レベルの研修を積み重ねているか否かが上記の質問を発するか否かの分水嶺になると痛感する。
尚、支援者の依頼により特定のクライエントに介入することがあるが、それ以前から当該クライエントとの繋がりがある心理士(師)の方が、〇〇という事情を知っているかと半ば、知らなくては対応できないニュアンスで突然伝えてくることがあった。しかしもしそのようなことがあれば、口頭で伝える前にケース記録を残して鍵の掛かる所に保管し、集団的守秘義務のもとにケースの引き継ぎという形での共有を行うことが自然である。特に訪問先が複数の場合、尚更である。
法41条の守秘義務の規定は、違反行為に関して罰則を伴うことから、訪問先の中でも最高責任者にのみ開示する対応法がある。組織の責任者の責任のもとに後々に介入する担当者に対して、守秘事項を共有する道を選択する方法もある。予め生命や身体の安全等、重要事項に関してクライエントの承諾を予め得ておくことが安全である。その中でクライエントの利益を守るために必要最小限の守秘事項を共有しようとする姿勢が大切と解される。クライエントの心理支援に必要不可欠な周辺情報を、単独で知っているが後任者に伝達せず、ケースを抱え込むことは本来あるべき姿ではない。
尚、心理士(師)の訪問日や訪問時間が限られている中で、回答に熟慮と時間がかかる質問状況を次の予定のために移動しようとする心理士(師)の、帰り際に伝える軽々しい内容ではないことは上記の心理検査のフィードバックの力に関する理解同様、明白である。仮にワーキングメモリの限界等記憶領域の御事情がある場合には、先ず訪問前に予めメモをして訪問時の早い時間帯に質問する配慮が必要である。
また尚、複数の心理士(師)が訪問する先で面接室を使用するケースがある。訪問回数が少ない心理師がいる場合には、その方に配慮して面接室の使用を許容する場合もある。しかし、常に当該心理師を優先的に面接室の使用を許容すると、定期的に訪れる心理士は、心理面接を生業としているために、その時間はどうすれば良いのであろうか。その面接室の使用を許すためには、複数の面接室の使用ができるように調整する必要がある。特に身近な相談員がいる場合には、その配慮が必要であるが、仮に公認心理師の有資格者の場合に、一方の心理師の業務を持続的に妨げることとなると、多職種との連携義務違反(42条違反)となり、公益通報の対象となるので要注意である。
また午前中早い時間帯から長時間訪問することが依頼されているケースで、いつでも質問事項に関して声をかければ答えることが可能であるにも関わらず、心理士(師)の帰り際に声をかけ時間外対応を暗に求めたり、こちらから声かけをしないと重要事項について回答せず、ケースを抱え込んでいる指導者や責任者もおられるが、時間外対応であることに関する配慮をあまりにも欠いている場合には、そもそもルール(契約)違反でもあり、次回に回答をさせて戴く方法が適切である。
心理アセスメント、心理検査について修士レベルの教育を受けずに、また検査の経験を積み重ねることなく心理面接の場におられるGルート研修生も存在する。当該研修生の対応したクライエントのケースの中で時折、後日、警察や児童相談所が対応した旨、報告を受けることがあるが、そもそもアセスメントの理解が希薄であるからこそ、適切な対応法を誤り、外部機関のお世話になる結末になる。スーパーバイザーの指導がないもとでまた経験のある有資格者の助言に耳をかさずに対応していることから生じる問題である。保護者対応、本人対応等、後日、問題が勃発する引き金をGルート研修生の面談で行っていることは、組織としてクライエントの安全のために可及的速やかに避ける必要がある。
シナリオで学ぶ心理専門職の連携・協働: 領域別にみる多職種との業務の実際
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心理臨床における多職種との連携と協働―つなぎ手としての心理士をめざして
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