関係性が動機付け要因となるという体験 [心理]
ケースカンファレンスの中で、どうしたらクライエントの行動を行動を向けて欲しい対象に向けて、動機づけることができるかと質問を受けることがある。
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それに対して回答が閃いたのは、クライエントと直接対話した瞬間だった。即ちある課題に一生懸命に取り組んでいた姿を拝見し、「そのお仕事好き?」と聴いた。すると笑顔だが微妙な表情でうなづき、集中して取り組み始めた。CLの笑顔を見た時に、必ずしも好きとは言えないが、集中して頑張ることに意義を喜びを感じ、何か意義を見出しているのではないかと直感した。即ち何かこちら側が気持ちを向けて欲しい対象を想定するよりもCLとの対話の中で、関係性が深化し、また声をかけたいという気持ちになった。この関係性の成立が次なる行動への動機付け要因となると感じた。
誰しも動機づけの対象が見られない時にそれは何か、好きなものは何かとか、将来何をしたいか、今は何をすべきかと言ったように目的的な要素を探そうとしてしまいがちになる。しかしそれでは、専らこちら側のニードにクライエントを合わせようとすることとなる。しかし大切なことは、時機をみてクライエント(CL )に声をかけ、CLが応答する時、見せた笑顔を始めとした率直な反応から次の働きかけの連鎖が生まれてくる。その時、両者の間に成立する「関係性」が生み出す何かが次なる行動への動機付けを生み出すヒントを与えてくれる。
初めから公式めいた回答を求めるより、また何かCLの行動変容のために速やかに「結果を出そう」とするよりも今等身大の自分ができる自然な行為でCLに関わってみると何かの反応を返してくれる。反応がなければ、また嫌悪感の表情を見せる時は、今この瞬間のCLの気持ちに寄り添いながら、少し待つ=効果的な沈黙をすることで、CLは自発的な反応を自己決定で見せてくれる時がある。そのCLの自己決定行動に自然な形で寄り添うことが、CLの更なる変容に導く可能性が出てくる。言わば「関係性」が心の癒しをもたらしたり、今この瞬間のCLを受容することを含むことで次なる変容に導かれていく。
他人の評価にとらわれすぎずに、先ず、御自分がCLに自然な形で働きかける中で、CLとの関係性を生み出そうとすることが重要である。「またあなたと会いたい」と動機づけられる瞬間が来ると思う。その瞬間が来るか否かは、専らクライエントのためではなく、支援者を含めた自分のニード(期待)が優先していないか振り返り、自らの寄り添い方を反省する必要がある。いかに対人支援者の立場にある者と言えど、御自分の思い込みから最初から決めつけていたのでは、CLとの関係性は築くことは難しく、新たな行動の変容は期待できないと思われる。
とかく上記の方の質問は、あきらめの口調で所詮期待することは難しいといった思いで問いかけてくる。表現の仕方は、ぶっきらぼうで、率直に雑な態度を示している。しかしそのような粗雑な態度を基本姿勢として、CLに向き合っているのであれば、先ず、建設的な人格変容に導く新たな「関係性」は生まれてくるはずがない。CLに対する支援者の御一人であれば、そのような当たり前の真実に早急に気づき認知行動を変えていく必要がある。
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