コミュニケーションの双方向性、説明と同意の関係性心理 [公益通報]
相手方に対してお願いをすることはもとより通常と異なる契約を結ぶためには、説明と同意が必要である。このインフォームドコンセントは、相手方とのコミュニケーションの双方向性が確立していれば、説明と同意のプロセスは軽減される。しかし双方向性が確立していない信頼感が希薄な関係では、説明と同意は、厳格なプロセスが求められるのが通常である。
ABC of 臨床コミュニケーション〜医療をスムーズにする“伝える/聞き取る”技術
- 出版社/メーカー: 羊土社
- 発売日: 2020/04/13
- メディア: 単行本
患者・家族の意思決定、現場の判断を支える “やさしい”臨床倫理フレームワーク: 困ったとき、現場で役立つ３つの視点 (医療安全BOOKS 7)
- 出版社/メーカー: メディカ出版
- 発売日: 2018/06/13
- メディア: 単行本
裁判例から学ぶインフォームド・コンセント―患者と医療をつなぐために
- 出版社/メーカー: 民事法研究会
- 発売日: 2015/08/04
- メディア: 単行本
子どもと子供の関係はもとよりであるが、組織の中でも同様である。一方が他方に対して通常と異なるお願いをする際には、説明と同意が必要であり関係性が希薄であればあるほど、より丁寧な説明が必要である。もっとも互いが組織の中で指揮命令関係にある場合には、監督者の指示に基づくものですと一言添えれば、通常は相手方への説明が軽減される。しかしながら特に関係性もなく言わば、平素煙たい感覚を抱いた存在Dが、いつもと違うことをAさんにお願いする場合には、丁寧な表現が必要である。特にAさんがDにあることを頼んだことがある場合に、快くその求めに応じている場合には、ある程度信頼関係の基礎が築かれる根拠がある。しかしながら、これまでAさんがDに些細なことを依頼しても悉くそれに応じなかったり、そのDと同じグループの人に依頼をする場合など、結果的にその伝書鳩の役割を果たしていない場合や、そもそも重要な事項をDから伝わっていなかった結果、Aさんが損失を被った過去がある場合には、AにとってDへの信頼関係は全く存在しない状態であるはずである。
それにも関わらず、ある時Dが偶々同じフロアにいたAさんにあることを頼んだ時、あたかも当然であるという口調でAさんの決定権の範囲にある事項について求めてくる時、上記のようにAさんとDとの過去の信頼レベルから、先ず快くは思わないはずである。その中で、説明もなく同意を求めてくる不遜な輩が不思議と存在することは否定できない現実である。その時仮に、DがAさんに求めることは、「監督者の指示」であり、「この度〇〇のような状況」で、「緊急性を有しておりますので」「本筋ではないのですができればお願いできないでしょうか？」と謙虚な姿勢と表現で一歩も二歩も遜って説明すれば、少しはAさんの同意は引き出しやすいかもしれない。しかしながら、例えば、悪しき循環気質が影響して、常に大声で組織の中で触れ回る迷惑な存在であるにも関わらず、何故か上から目線で当然の求めであると錯覚し、十分な説明もなく、Aさんが本来同意する必要もない本筋とは異なる行為について同意を求めてくる人がいることが稀にみられる。ここでは、説明と同意というプロセスとその「説明スキル」を欠いたがゆえに多くの場合、Aさんはもとよりのこと、互いの心情を害する結果に導くことがあることを省みる必要がある。
カウンセリングや心理療法では、心理士（師）がクライエントに一定の説明をして同意に基づき、Counselingのセッションに入る。同意をした上で日時の予約を取り心理面接に移行する。そして仮に組織の監督者の了解が必要であれば、事前の了解を求めて実行する。それはあくまで関係者である心理師とクライエントとの同意に加え、必要な了解の下で遂行するものであるため、それ以外の者が介入することは原則として許されない。
しかしながら一度クライエントの合意を得た上で説明を丁寧に行ったプロセスについて疑義を呈して、その意思は本当かと疑問に思い、そのプロセスに介入する輩が稀に存在する。幸いその意思を確認した時には、当初の心理師が確認した意思と同じであり、予約日を静かにむかえる状況となった。しかしながらそれに対して理解を示さない人達がクライエントのプライバシーの領域に侵入して、本来アセスメント権限と技能がある心理師の判断とクライエント及び管理者の同意を乗り越えて、心理面接を妨げる動きが稀に存在する。これは、少し厳しい御指摘をすれば、偽計ないし威力業務妨害(刑234）という刑法に規定する実行行為の共同正犯（60）条に該当し公益通報の対象となる行為である。
仮にこのようなプロセスが組織の中で存在する場合には、Dからの申し出は、上記の経緯がある場合には、中々同意が難しいというのが実情である。心理士（師）の有資格者であれば、慎重なアセスメントのもとに丁寧な説明をしてクライエントの同意を得る実力と権限を有し、現に実行していることと解されるが、説明と同意を省こうとする人々にとって、正当な理由があるAさんの存在する自由とクライエントの権利を不当な形で奪おうとしているということを当事者は十分自覚する必要がある。本稿で少しでも心当たりのある方は、説明と同意＝インフォームドコンセントは、関係性の中で醸成される信頼感に規定される基盤があることを知ることが必要である。
コメント 0