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心理士(師)の守秘義務とクライエントのプライバシー権 [公益通報]

公認心理師法41条は、「正当な理由がなく、その業務において知り得た人の秘密を漏らしてはならない」と規定する。これは裏から言えば、クライエントのプライバシーの権利(憲法13条・21条)を保護する規定である。


第1巻 公認心理師の職責 (公認心理師の基礎と実践)

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公認心理師の職責 (公認心理師スタンダードテキストシリーズ 1)

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臨床心理学 第19巻第4号―公認心理師のための法律入門―仕事に役立つ法と制度の必携知識

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公認心理師エッセンシャルズ 第2版

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公認心理師法42条には、「連携」等の義務が規定されている。そこにおいて、集団的守秘という名のもとに、守秘義務を開示することを求められる場面に直面する。若い心理師とのカンファレンスでテーマとなることは、41条の『正当理由』の範囲である。特に医療機関でのカウンセリングでは、主治医との間で守秘義務は厳密に保たれる、医師も守秘の開示において秘密漏洩の罪が問われるため、心理師との緊密な連携のもと、治療行為に必要不可欠な内容は、開示が求められると解される。主治医から守秘内容の開示が求められた場合には、主治医の指示を受ける心理師が開示することは、「正当理由」になるだろう。しかしながら例えば教育機関において学校の責任を負う管理職でもない立場にある教師が単に、本人の同意を確認することなく自分の担当する子供の心の内を知りたいという衝動にかられた時、集団的守秘義務を名目に心理士(師)に問合せがくることもある。そこにおいて、子どもと言えど、プライバシーの権利は保証されている。保護者や教師に知られると困ると感じることはあるだろう。保護者の場合には、監護監督権との関係で知らなければならないことは正当理由の幅が広がる可能性があると解されるが、担任教師が、本人の同意なく心の中の秘密を知りたいという衝動に駆られてカウンセリングの内容を聴き取ろうとするのは罰則付きの守秘義務の規定に反する行動を「教唆(刑法61条)=そそのかす」する行為となる。管理職の個別の許可を得て行うならば心理師の守秘義務の例外となる「正当理由」の範囲は若干広がると解されるがその管理職は、組織の最高責任者に限られるはずである。その許可のもとに開示せざるを得ない場合には、間接正犯の構造となるが、中間管理職や担任の求めで応じることとなると生命に関わる内容など明確な正当理由の根拠を示さなければ開示することは難しい。なぜならばあくまでも守秘の主体は心理師であり、中間管理職や担任教諭は教唆(61)という構造となってしまうからである。

 以上の理解を踏まえて、慎重に子供や保護者のケースに働きかける方は、公認心理師法という法律が周知されていないことで意外に多いと感じるとケースカンファレンスでの発言を総合すると捉える今日この頃である。同じ組織に訪問するカウンセラー(心理師)が複数いれば、当該組織における経験に応じて、聴きやすい心理士(師)と聴きにくい心理士(師)が存在すると認知されることもある。その場合、上記の担任や中管理職がもう一人の心理士を通じてクライエントに介入することがまれにある。その場合には、クライエントに直接対応した心理士(師)に連絡してクライエントの心理状況を確認してからでも遅くはない。しかしながら担当者の焦りや不安が嵩じて担当心理師に無断で、面接の内容を聴き出すことがあると聞くことがあると、クライエントの同意がない場合、そのような行為は、心理師がカウンセリングを行った際、知り得た秘密を開示したとクライエントに誤解されてしまう。守秘義務で守られた信頼関係は瞬く間に崩れ、担当心理師は守秘義務を守っていたにも関わらず、あたかも隙間から水が流れ出るように秘密が漏れたことと誤解されてしまう。となると、クライエントの同意がない場合、面接を担当した心理師の守秘義務違反という「濡れ衣」で罰則付きの規定を踏まえて刑事告発される恐れが出る。それが組織の責任者の命令で行われるとすれば間接正犯の構造をとるために担当心理師は責めを負うことはないと解されるが、それが中間管理職や担任、多少ベテランの上司レベルでもう一人の心理士が動いたとなると話は別である。その周囲の方々は、教唆(61)や幇助(62)が構成されるのにとどまるが、結局正犯の「濡れ衣」を着させられてしまうのは担当心理師である。自ら何もしていないのに守秘義務は周囲の営みにより破られる恐れを常に孕んでいることを考えるとケースによっては訴訟に発展しかねない程の問題であることを心して理解するべきである。

 生命に関する内容でないことが明白であるにも関わらず、自分の担当する生徒が心配だからクライエント本人に確認することなく、心理師と話している内容を知りたいといって聴き出そうとする行為は、子供が、カウンセラー以外の人に知らせたくない意思決定しを表示している場合、連携や集団的守秘の名の下に「正当理由」を逸脱する脱法行為であり、時に教唆を構成する行為であることを肝に銘じなければならない。それは公認心理師資格を有しない心理士であっても同様である。心理師の立場を守る必要があるケースについて日々考える今日この頃である。

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