しがみつく心理行動特性への臨床心理対応 [心理]
見捨てられ恐怖を感じると、誰彼かまわずしがみつく、気に入らなければ攻撃行動に出て誰彼構わず周囲に触れ回る…そんな境界性人格の姿を幾たびも観てきた。
境界性パーソナリティ障害は治せる! 正しい理解と治療法 (心のお医者さんに聞いてみよう)
- 出版社/メーカー: 大和出版
- 発売日: 2013/05/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
クライエントをサポートする場ででどの場でも必ず存在するのが、境界性人格である。それが障害のレベルまで至ると、長年に渡り、周囲を困らせ、時に管理的な立場にある者を振り回す行動に出る。自己愛的な要素も兼ね備えてくると、何百人もいる中で、自分の家族の特殊性を主張し、特別扱いを求め続ける。そのようなクライエントを前にした場合、先ず医師がいる場合には、心理師は、主治医の指示に従うことが法律の規定である。しかしながら、主治医が指示することが困難な場合、主治医がいない場合と同様、現実に担当した心理士(師)が判断を求められる。特に上記の周囲にしがみつく心理行動特性がある者は、Doctorshoppingを繰り返す。Doctorがいない場合には、心理士(師)にむけられる。言わば、psychological-shoppingである。自分自身の行動に信頼が持てないため、自分を認めてくれる存在を求めてさまよい歩く。そして藁をもすがる思いで何人もの支援者を探し出す。経験の浅い支援者は、その重さに耐えきれず、その対応をやめてしまう。すると、当該境界性人格障害者の方は、血相を変えて他の支援者や管理職に非難の主張をし続ける。次の支援者は、その怒りの感情を受け止めて適宜対応するが、当該人格障害者の方は、自分の子供を成長を見守る立場にありながらも見捨てられる恐怖が背景にあるためにいつまでたっても自己成長することが難しく、依存できるととらえた相手にしがみつく行動を繰り返している。過去の未解決の感情が心理葛藤の根源にあり、くすぶり続けていることから見捨てられ恐怖が顕著に感じられた場合、しがみつけなくなった事態になると、あたかも階段を外されたような錯覚に陥り、生命恐怖を感じることで、自らの虚偽のつくられた人格イメージを守るために、わんわんと攻撃行動を繰り返す。このような行動を繰り返している人は、周囲から同様の行動が反復していることを省みられた時、誰も相手にする人はおらず、孤立化の道を辿ることになる。見守るべき子供がいてもその子供は、見捨てられる恐怖に戦きながら、周囲にしがみつく親の背中をみて過ごしているため、親と同様に自己成長することができない。重症例になると自発的な自己決定行動に至ることが難しくなる。その結果、生きる力を獲得することができない。そのようなクライエントにしがみつかれ続けると、組織において、混乱をもたらすばかりでなく、支援者の精神健康を阻害する恐れがある。そこで、年度替わりなど区切りの良い時期を選択して終結することを原則とした方が安全である。そのような原則を予め提示し終結することを同意しておきながら、年度が替わると、これまで対応されていた支援と同じ対応を求めてくる。そしてそれが得られないと、周囲に向けて当たり散らす。このような心理特性は、世代間伝達されている場合もあるが、往々にして専門的な職業についているケースもあるとケースカンファレンスでは、聴かれる場合もある。このようなケースは、いつまで支援するべきであろうか、カンファレンスで問われることもある。その場合、クライエントの自発的な予約がない限り、心理士(師)対応することは適切ではないと答えている。何故ならば、見捨てられ恐怖に侵された心理行動特性を乗り越える機会を失うからであり、子供も含め人間の建設的な人格成長の機会をほぼ永遠に失う危険があるからである。
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