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在宅児童生徒の学習不安 [心理]

在宅学習が続くと誰しも不安が嵩じてくるのは自然な心理である。

緊急事態宣言の見直し後、関東の首都圏は継続決定が下された。もっとも25日までに感染者の動向に改善傾向が顕著であれば、解除の見通しが見えてきた。3月から3か月の間、児童生徒は臨時登校があれど授業を受ける機会もなく、自宅学習が続いている。学校からは課題が渡されるが、一度に多くの量が渡された場合、そのペース配分が問題になる。ある子供は一度に終えてしまい安心させたい人もいれば、一歩一歩進んだ方が自分のペースにあっている人もおられる。学習心理学で言えば、全習法と分習法の違いを認識しているかという問題でもある。前者が得意な人は、あたかも全体の課題を一気に終えてしまうことで安心できる心境の方もおられる。他方で全体をパーツに分けて学習を進めた方が理解が進みやすい人もいる。この問題は得意な科目によるとも言える。例えば、数的な計算や数学的な問題解決が得意な人は、公式を理解すれば難なく問題を理解して解く力が備わっている場合が多い、言わば演繹的な思考方法が得意な人がいるのに対して、理科や社会等、個別事象の観察や実験に基づく課題の理解、個別的体験により理解を深めるのが得意な言わば、帰納的思考が馴染む人もおられる。それに加え、これまでの学習経験で教えてくれた人への愛着もあり、科目との相性や理解を積み上げてきた深さの違いなど様々な相違点があると思われる。

 以上の様々な子供達の科目に対する傾向性を把握して課題を出す必要がある。時に完璧主義的な思考が強い子供は、短時間のうちに一気に学習をやり終えなければ気が済まない人もいる。全て終えることで安心しようとしている場合もある。しかしながら一気にやり終えようとしても理解が今一つのまま無理に学習を進めようとしたりしてはいないか、当該科目に関する基礎的な概念を正確にどこまで深く積み上げているかなど確認する必要がある。特に長い休講期間の場合には、定期的に登校日を設けて、児童生徒の質問に答える機会を与える配慮も必要である。学習の途中で全く分からなくなって一歩も進めないまま残りの時を過ごす人もおられる。確かに一人ひとりの個人差もあるだろうが、単にプリントを渡すだけではなく、また、漠然と学習範囲を指定するだけではなく、学習をどのようなプロセスを経ると理解が進むか、覚えなければいけないキーワードは何か、書き起こさなければならないセンテンスは何か等、科目や学習のプロセスについていま少し子供たちが安心して理解できるような手がかりを与える必要があると思われる。確かに塾や家庭教師と学校は異なるが、授業が行われて双方向性が生まれる環境の中で進めていた学習と一線を画する環境の中では、決して課題の丸投げにならないよう心を配る必要がある。もし緊急事態宣言の休講期間で学習理解の個人差が大きく生まれるとすると、学校再開後の不登校が増えてしまうのではと危惧する人も数多くおられるのではないかと思う今日この頃である。

エビデンスベースの教育心理学―心身の発達と学習の過程―

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