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重度の引きこもりの子供の背後に隠れた保護者の病理 [心理]

引きこもりの子供の主訴をケースカンファレンスで伺う時の視点には共通点がある。

親から始まるひきこもり回復 心理学が導く奇跡を起こす5つのプロセス

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  • 作者: 桝田 智彦
  • 出版社/メーカー: ハート出版
  • 発売日: 2019/04/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
8050問題の深層: 「限界家族」をどう救うか (NHK出版新書)

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  • 作者: 稔, 川北
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2019/08/30
  • メディア: 単行本
CRAFT  ひきこもりの家族支援ワークブック―若者がやる気になるために家族ができること

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  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2013/09/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
中高年ひきこもり―社会問題を背負わされた人たち― (扶桑社新書)

中高年ひきこもり―社会問題を背負わされた人たち― (扶桑社新書)

  • 作者: 藤田 孝典
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2019/11/02
  • メディア: 新書
引きこもり、特に重度の引きこもりの子供は、大人になってきた現在を含め、初めから引きこもりの状態であることは少ない。母親との分離不安もあるが、幼少期や学童期に重要他者との間で何らかの衝突を起こして心傷体験を体験した際、その心傷記憶と同様の体験を回避するために自己防衛しながらひたすら回避し続ける。その状態を保護者がそのまま放置したままにしておくとその状態は悪化してしまう。特に幼少期や学童期に保護者から虐待を受けたり、家族の離散体験を経験すると、自己を守ろうとする防衛心が強まり、その防衛心を強化するベクトルに保護者やご家族が動いてしまうと、防衛心が強化され、家族以外の対人関係を一切遮断する方向に自らを導いてしまう。特に離散経験の最たるものは、保護者同士の別離である。その別離が保護者の責めに帰するべき事由によると保護者が感じていると、罪悪感が嵩じてしまい、その罪悪感に対して子供が責める態度をとると、罪悪感を軽減しようと、子供の求めに応じてしまう行動傾向が強まることになる。子供自身も少しずつ成長すると、保護者の弱点を知っているためにそこを突いてきて、自己成長を閉ざして、日常生活行動を含め全て保護者にゆだねてしまう行動傾向が出てくる。その結果、朝起床し、食事を与え、身だしなみを整え、外出を促し、対人関係を形成するための声かけ等、人間が社会生活を営む上で必要な行動について、全て一番身近にいる父親又は母親に委ねるようになる。身近な重要他者としての保護者は、自らの過去に子供に対する罪悪感を抱いているため、自分の罪を償うため、可哀そうだという気持ちを起こしながら、日常家事動作について、全て変わってあげてしまう行動パターンが形成される。その行動パターンが形成され、継続すると、子供が外出することを含め難しい場面が継続し変容が難しいとあきらめてしまい、無力感にさいなまれることになる。すると、自らの力で自分が生み育てた子供に対する指導への自信を失い、子供の変容を周囲に任せてしまうように過度な依存心を抱くようになる。もう私が声をかけても私の子供は言うことを聞いてくれない。もう無理だという心の声が繰り返されてしまう。幸い、祖父母のような指導者がいれば、その指導に効果がみられる時があるが、その祖父母がまた、父母と同様に過度な依存心を助長してしまうと子供の成長は困難になる。言わば依存心とあきらめによる無力感の世代間伝達が継承されることになる。

 その結果、子供は、①朝起床し日中活動したり、②必要時外出し周囲との社会関係を形成するためのコミュニケーションが保てず、③家庭訪問をしても体の良い理由をつけて常に回避してしまう。④メールを打つことはできるが、相手の返答に対して適切に回答ができない。⑤食事や運動習慣が保てず健康行動を保つことができない。⑥連絡のため着信を残しても自発的な返信ができない。⑦すべて周囲の支援に依存する行動習慣が形成され、その習慣を保護者の罪意識や無力感に基づく行動傾向が強化されてしまう。⑧世代間伝達される家族背景があると上記のような行動傾向が益々強化され本人の行動変容は益々困難になる。

 以上のような状況をカンファレンスで伺った際、先ず第一に考えられるアプローチは、保護者の心のエネルギーを回復し、保護者の子供に対する指導に関する自信を回復させることである。しかしその保護者の脳の中に過去の心傷記憶が癒されないまま残っていると、自分への不信感が拭えない状態が常態化し、支援者への不信感として投映される。すると所謂Counselorshoppingという支援者探しの旅が始まる。ある時は若いCounselorの支援を受けたり、ある時はベテランCounselorの支援を受けるが、特に面接の構造化が難しく、保護者の自己変容の決意が固まらないまま支援を続けてもいつになっても効果は表れない。子供の変容に対する責任を保護者自身ではなく、Counselorを含めた周囲に求めているため子供の日常生活行動への変容に導くことは難しい。

 保護者の心のエネルギーが回復されていくと、今度は思い通りにならない怒りとして表出されることがある。祖父母が健全な生活をしていれば別であるが、世代間伝達された病理が隠れている場合には、子育てをしている子供の無力感や過度な依存心に基づく怒りを強化してしまい、そのまた子供の自己成長に導く指導力を発揮することは益々困難になる。スーパービジョンの中でそのようなケースの助言を求められた時には、カウンセリング

を求められる場所や空間との関係では、スクールや教育相談機関、医療機関の中では、ある意味で限界があることから、動きずらい現在のクライエントの状態を心理教育の中で専ら説明に留め、いつの日に訪れるかわからない母親の自己成長に向けた決意が高まるのを見守るに留めることもある。反対に保護者が求めた通り、Counselorが着信を残しても自発的な返信がない場合には、相当な期間が経過した時点で自然終結すると考えるのが自然でもある。人は皆自分の幸せを求めて生きている。その生き方として引きこもる形での生活を心から選択するのであれば、引きこもりからの脱却を本人の意思に背いてまで強いるものではない。もしその引きこもりを父母や祖父母などの保護者が伝達してきたものであれば、その保護者に責任の一端がある。特に父母や祖父母が教育者や心理支援者である場合には、引きこもり状態を強化し続けてきたその責任は極めて重いと捉えるのが至極自然ではないかと考える今日この頃である。

 過度な依存心が嵩じてくると、Counselorに依頼を求めるが専ら電話相談の形で依頼するが、他人から電話をかけさせて自分で電話料金の負担すらしない。着信を残しても返信せずただ再度の連絡を待つばかりとなる。子供ばかりではなく、そのような保護者が存在することをカンファレンスやスーパービジョンの中で振り返ると、担当したスーパーバイジーや担当Counselorが不憫でならない。

 

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