描画法の適用 [心理]
構造化されたテストバッテリーは、質問紙や作業検査法で主に行われるが、心理テスト法の施行に習熟していけば、投映法として機能する描画法を組み合わせることも可能である。
投映描画法テストバッテリー―星と波描画テスト・ワルテッグ描画テスト・バウムテスト
- 作者: 杉浦 京子
- 出版社/メーカー: 川島書店
- 発売日: 2012/11/01
- メディア: 単行本
臨床描画研究32: 描画に表現される「自分らしさ」とその葛藤
- 作者:
- 出版社/メーカー: 北大路書房
- 発売日: 2017/07/03
- メディア: 単行本
投影描画法ハンドブック―絵によるパーソナリティ理解 (有明双書)
- 作者: 赤坂 澄香
- 出版社/メーカー: 武久出版ぶQ出版センター
- 発売日: 2014/03
- メディア: 単行本
若い心理師のスーパービジョンのプロセスで描画法を取り上げる機会も増えてきた。自身は科学的な見地からより客観的なデータの構築に重きを置くため、構造化された質問紙法やWISCⅢやⅣ、WAISⅢ等の作業検査法を活用することが多かったが、ロールシャッハ検査をはじめとする投映法にも機能する描画法を用いる機会も増えてきた。若い心理師の中には、3Dの視点から描画を構成する方法に長けている方もおられる。特にアニメ世代では、コミックやアニメを見ながら自ら描画する機会が多くなってきたのだと思う。描いている絵画をみるととても見事なものもあるほか、バウムテストや風景構成法、家族描画法等の実際の作品を見せて戴くと、見事な鉛筆の運びによる描写を通じて、体験した対象のイメージが顕著に映し出されていることが分かる。クライエントの深層心理にアクセスするためには、質問紙の質問項目への回答を論理的に組み立てて理解を深める方法もあるが、クライエントの心理が投映されている描画を分析対象とすることが直感による深層イメージに対する気づきに導くことがある。クリニック臨床が主だった頃は、診療報酬のポイントに加算される検査の理解が主であったが、最近は、診療報酬加算になくとも、あまり知られていない描画検査もクライエントの深層にアクセスする上で有効であるため、それらも活用する機会が増えていくと思われる。
もっとも、描画法はロールシャッハテストのようにコーディング(コード化)が進んでいるかと言えばそれは難しい場面が多く、心理師の経験技能の深さと直感がもたらす解釈の確実さが左右する要素が強い側面がある。質問紙検査や作業検査法に比べてテスターの主観が介入する度合が強いのも事実である。質問紙検査はクライエント自身が質問紙の文面を読みながら自分自身の感情や認知と向き合い、現実の行動を顧みるための気づきを得ることができるのに対して、描画法は、クライエントが鉛筆を用いながらご自分の絵を表現することを通じて、投映された自己イメージに気づきながら傷ついた自分の心が癒されていく要素があると捉えている。
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