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守秘義務への呪縛が主訴の解決を遅らせる現実との葛藤 [心理]

重箱の隅をつつくタイプの人は、気質分類においては執着気質の人に多くみられる。特に管理者が、執着気質で厳格すぎる守秘義務にとらわれていると、かえって主訴の解決を遅らせ、時にいつまでたっても解決ができず周囲を巻き込む状態を作り出す。

正常ですで終わらせない! 子どものヘルス・スーパービジョン

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  • 作者: 阪下和美
  • 出版社/メーカー: 東京医学社
  • 発売日: 2017/04/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


マンガでやさしくわかるアサーション

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  • 作者: 平木 典子
  • 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
  • 発売日: 2015/07/25
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夫婦・カップルのためのアサーション: 自分もパートナーも大切にする自己表現

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  • 作者: 野末 武義
  • 出版社/メーカー: 金子書房
  • 発売日: 2015/08/18
  • メディア: 単行本
スーパービジョンへの招待: 「OGSV(奥川グループスーパービジョン)モデル」の考え方と実践

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  • 作者: 河野 聖夫
  • 出版社/メーカー: 中央法規出版
  • 発売日: 2018/10/13
  • メディア: 単行本
スーパーヴィジョンの実際問題 心理臨床とその教育を考える

スーパーヴィジョンの実際問題 心理臨床とその教育を考える

  • 作者: ポール・クーグラー
  • 出版社/メーカー: 福村出版
  • 発売日: 2019/09/06
  • メディア: 単行本
臨床心理学 第19巻第3号ー心理専門職必携 ピンチに学ぶスーパーヴィジョンガイド

臨床心理学 第19巻第3号ー心理専門職必携 ピンチに学ぶスーパーヴィジョンガイド

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2019/05/09
  • メディア: 雑誌
増補改訂 心理臨床スーパーヴィジョン―学派を超えた統合モデル

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  • 作者: 平木 典子
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2017/07/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
深奥なる心理臨床のために―事例検討とスーパーヴィジョン

深奥なる心理臨床のために―事例検討とスーパーヴィジョン

  • 作者: 山中康裕
  • 出版社/メーカー: 遠見書房
  • 発売日: 2009/09/20
  • メディア: 単行本
スーパービジョンのはじめかた:これからバイザーになる人に必要なスキル (シリーズ はじめてみよう 2)

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2019/08/24
  • メディア: 単行本
正常ですで終わらせない! 子どものヘルス・スーパービジョン

正常ですで終わらせない! 子どものヘルス・スーパービジョン

  • 作者: 阪下和美
  • 出版社/メーカー: 東京医学社
  • 発売日: 2017/04/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
守秘義務は、プライバシー保護の表裏の姿であるといわれている。プライバシーの権利は、日本国憲法は表現の自由を規定するが当該規定(21条)及び個人の尊厳(13条)から導かれる権利である。そしてそのプライバシー保護のために関係者の守秘義務が求められる。しかしながら、この守秘義務をあまりにも厳格に解して適用すると、大切な問題が解決されないことがある。子供達がこのことは内緒にしていてほしいと言って希死念慮を友達に示したとする。教職員が知りそれを本人に伝えたらそれを家族に伝えないでほしいと言うことがある。そして真面目な教職員は、その私的な守秘義務を厳格に守る人もいる。それを知った管理責任者は、その子供の思いを抱えこんでしまった。このような事案に似たケースはよくあることである。しかしながらそのことを抱え込んで、親に知らせないうちに、子供は実行行為にうつる自己決定をした。管理職は、守秘義務を大切にするあまり、その事実を秘匿していた。その反対もありうる。子供が重篤な疾患にり患したり、重い犯罪に手を染めようとしていた場合に対して、保護者から相談があった場合、管理職はその守秘義務を重んじるあまり、誰にも伝えなかったとする。結局は、見守りの甲斐なく子供の生命が危険となり、また重い犯罪に手を染めてしまった。刑事責任能力があったため、書類送検されてしまった。これは仮の事例である。

 心理師はこのようなケースへの対応を依頼されることがある。その中で法に規定される守秘義務を負っている。それゆえ、その守秘義務を重くとらえるあまり、重大な結果を招いてしまう危険を常にはらんでしまう。そのようなことを防止するため集団的守秘義務という都合のよい言葉がある。組織や一定の関係者の中だけで、秘密を共有することで、子供や保護者を取り巻く家庭を見守ることができることになる。限られた範囲の中で心理師が適切な助言をすることで、他機関との連携が保たれ、重篤な結果は免れることができて安堵した。そんなケースは数多くあるだろう。特に犯罪に手を染めることを開示したクライエントをCounselorが秘匿していたがために結局、刑事及び民事責任を負ったという有名な判例もある。

 組織には様々な管理者がいる。法律の規定を柔軟に解して運用する管理者Aと、厳格に解して時に重箱の隅をつつくような発言をする者(B)も存在する。確かに守秘義務の規定を踏まえると、相談した人の守秘を守ることが必要と一応は言える。しかしながらそのクライエントが一番困っている状態が、その相談を持ち掛けたクライエント自身の行動特性や誤った考え方(イラショナルビリーフ)に起因しているとすれば、話は別である。

 その守秘義務を守り続けることがかえって解決を遅らせたり、刑法に規定する犯罪行為の結果発生の現実的危険を伴うとすれば、どうだろう。管理者が期待していることは、守秘義務を守るということよりも、クライエントから依頼された主訴を解決するためにはどうしたら良いかということのはずである。その場面で、心理師に詳細な事実を伝えず、関係者の中で解決を丸投げすることがあることを若い心理師から伺うことがあるが、その内容を一定の範囲の人に開示しなければ詳細に関して分からず、解決の糸口を見つけることができない。

 当の主訴を抱えるクライエントは、(仮に)特性不安が強く、現実の抑うつ度も危険域にある場合が往々にしてあるが、解決を急ぐあまりそれを複数の公的機関に解決を求めて予約希望を重ねていく人がいる。しかし公的相談機関や医療機関はどこも忙しくて中々予約が取れない。ようやくその機関の予約がとれたがまだ何か月か先にある場合、その間対応をどうしたら良いかと迷う。そうすると心理師がいる機関に手当たり次第連絡して解決を求め続けるという人もいる。これは医療機関Aに依頼して一定の解決方向に導かれたにも関わらず、途中で解決のスピードに満足できなくなり他の医療機関をショッピングしたり、手当たり次第、Facebook上で心理師に声をかける患者と同様の状態に陥っている。

 クライエントがとある機関に予約をしたならば、その機関と機関担当者を信用して主訴の解決を待つべきである。その中で、疑問があれば、当該機関の担当者に電話連絡をして当面の対応に関する助言を受ければよい。それにも関わらず何故あなたは、他の機関に時間外の予約を取り、一方的な解決を求めてくるのか。それならば、最初に予約した機関は何をすれば良いのか。初回面接を行う人がAからBへそして、CからDへと次々と躁鬱病患者のように移り変わっていく結果、解決が遅れるということがある。その場合、クライエントへの守秘義務を厳格に守り続けたらどうなるだろう。結局は、例えばABCDの公的機関や相談室、Counselorや心理師の中で、同じ主訴がそれぞれ議論され蒸し返されることになる。その都度当該クライエントの気に入らないことがあるとAは予約日が先だからBにお願いしたが、Bは、時間外の対応をしてくれず自分の仕事に差し支えるからCに連絡をしてみた。するとCは、先に予約をした機関があれば、まずAに相談してみることが良いと伝えられ、挙句の果てにDの相談室の電話に立て続けに電話を掛けた。しかしDの心理師は優秀で多忙であるため、中々その電話には出ることができない。対応の不全を管理者に伝える…その執着気質の一部、管理者から重箱の隅をつつくような表現で契約時間外に強い言葉で指示をされ、一定の行動を強要された結果、元々あった予定変更を余儀なくされた…といった内容が若い心理師から半ばTwitterで呟かれるぼやきのように聞かれることがある。

 上記のような仮のケースを前提とすれば、まず、仮に予約が先であったとしても当該機関が公的機関であれば、まずクライエントが解決を急ぐ事情を伝え、緊急案件として予約を速めてもらうことが必要である。それが難しい場合、Aの心理師から初回面接前であるが、当面の対応策に関して助言を得ることが必要である。それが難しい場合には、公的機関であれば、クライエントの主訴に関わる案件に詳しい担当者が所属する他の機関を紹介することをすることが望ましい。B機関からそれすらも難しいといわれたためC機関に相談したが主治医の指示が必要とつっぱねられてしまった。そして仕方なくDに連絡をした。Dでは、心理師が定期的には訪れるが、訪問日が少し先であるため、当面Dの職員が面接を行った。しかしながらその面接を行った担当者が自分には手に負えない領域であるため、先の心理師につなげようと思った。ここで問題であることは、面接内容を記録にとり、インテイク面接に類する情報として後日訪問する心理師に伝えたかという問題である。それをせずにまたクライエントの主訴を一から聞き直すとすれば、クライエントとしてもDの中のことなのに情報伝達されず一から説明しなければならないと釈然としない思いになるのが当然であろう。しかしDの面接をした職員の方は相談面接では有資格者ではないけれども、同じ職員として守秘義務があると認識している。そこで、その守秘義務を厳格にとらえて後日訪れる心理師に直接連絡を取って聞いてくださいということがある。しかしながらクライエントは中々夜遅くまで仕事をしていてそう簡単に休みはとれない。だから今度は遅い時間帯になるが面接をしてほしいと願いでることがある。それを聞いた人が答えにくい表情で、直接心理師に聞いてきてくださいと答えた。

 しかし心理師は契約の時間が決まっていて、時間の調整をすることはできない。加えて別稿で述べた面接枠の構造化や面接時間枠の構造化の原則に乗っ取り決められた時刻に訪問し、決められた時刻に帰る。そしてあくまでも面接予約の時間は、決められた時間帯の中で面接45分~60分以内、インテイクの場合には+α15分程度の範囲で予約を受けるというシステムを基本としてその考え方の運用が望ましいという信念を抱いていた。

 そのような状態の中で、若い心理師はできるだけクライエントの実情をくみ取ろうと本部に連絡をして時間調整は可能かと確認した所、時間調整は可能で心理師の自己決定に任されることだけれども、仮に面接時間が何時間と伸びたとしても伸びた分の記録は書面上残すことはできない。仮に残したとしても給与が支払われない。といったことを若い心理師は言われてしまった。以上の状況をスーパービジョンの中で伺うことがあるが、そのような場合、いくら心理師が誠実な人間であったとしても、自分の自己決定をないがしろにされているように感じるのではないかと思うのはスーパーバイザーとしての自分だけだろうか。誰しも自分の価値を減額されたり値踏みされたりすることは、いやな気持に陥るだろう。交流分析では、discountという用語があるが、心理的に心理師の自尊感情をどれだけ低減せしめるものであるか測りしれないと感じる。若い心理師は、真摯に物事に打ち込むだろう。仮に時給換算として低い値になったとしてもCounselingの質は変えないという自負があるだろう。しかしながら訪問時間が長時間に渡れば、遅い時間帯になれば、いくら優秀とは言え、集中力は切れてくるだろうし、時間が押してくれば集中力の欠如による判断力の低下は起きるだろう。その中で、適切とは言えない発言があれば、今度は管理職から重箱の隅をつつくような指摘をされることになる。率直にsupervisorとして若い心理師に伝えることは、このような仕事は一切受理するなということである。

 そこには正答ないくつかの根拠がある。①クライエントは元々主訴を抱えて複数の相談機関を訪れたし医療機関の予約を取ったが、自分の私的な仕事の時間に合わないと断ったケースもある。②その末にAという機関に予約をしたならば、Aの機関がインテイクを行い、主訴を解決するための治療同盟の主軸になるだろう。③それにも関わらずAという機関に予約していることを秘匿して、緊急性を理由にDの心理師に依頼する運びとなった。そしてDの組織の中で心理師ではない担当職員が受付をしたがその内容を詳細な記録に残さず、手に負えないと後日訪問する心理師に丸投げをした。その間には、心理師が訪れる相談室には他の常勤の相談員がいるがその相談員も手に負えないため心理師にインテイクをした職員に詳細も聞かずにメモも残さずに心理師にすべて対応を任せようと思った。④しかしながらD機関といえど組織であれば、同じ組織である担当者にクライエントが詳細に事情を話したとしても、その事情のポイントが後日訪れる心理師に伝わっていない。なぜ一から話さなければいけないのかという思いがこみあげてくる。そんな思いが強くあるから、心理師の訪問日にですら電話をかける時に心理師の都合を聴こうとしない。わざわざ、対応しにくい時間に電話をかけてくることが着信記録から当該若い心理師は直感した。その事情を熟慮することなく、相談員も心理師に対応の事情を事前に伝えず、心理師に丸投げした。何故ならその対応に追われてしまうと他のケースへの対応と帰宅時刻が遅れてしまい時間調整が難しくなるからである。⑤そんな複雑な事情を踏まえた時、ケースを振り返ると機関Aの担当者から電話で助言を求めることが適切であるし、それが難しい場合には、できるだけご自分の業務の都合をつけて機関Dの心理師の時間に合うように連絡をするべきである。その際、複数の電話番号があれば、もう一つの電話にかければ心理師を呼び出すことができるかも知れないと察することができるはずである。⑥上記仮のケースの詳細を分析すると、訴えていた主訴には、クライエントの親族間の衝突が背景にあり、当該重篤な症状がみられるIP(顕在化された患者)は、ご夫婦の関係性を含む親族間の衝突がもたらす感情の衝突が背景にあり、当該クライエント自身の感情の制御が難しいために衝突が顕在化しているということが推察された。⑦他方でIpは、健康度も高く生活している一方で、心理師の訪れる所属先では、伝え聴く所によれば全く不適応がみられず健康に日常生活を送っている。問題は家庭の中で顕在化しその陰で重大な犯罪に手を染めようとしている。そのような場合、、IPの問題というよりも、そもそもA機関に予約したクライエントご自身の感情制御と家族間の気質理解の問題であるということが推察され、スーパービジョンの過程で若い心理師に再度伝えた。

 このようなケースは特に契約の時間外では絶対に受けてはいけない。仮に管理職の指示といえど、時間外の評価がされない本部の方針の下では、絶対に調整をしてはいけない。それは臨床心理の面接枠、面接時間の構造化の観点からも合理性がある。境界例的な行動傾向を示すクライエントのために心理師のスケジュールを曲げてまで、又他のケースや面接事務の遂行に影響を与えてまで対応する必要はない。クライエントの緊急性は、クライエント自身の特性不安の高さに起因する抑うつ度の高さが背景にある切迫感に由来するものであり、経済的に困難をきたすものでなければ、土日に開業されているCounselorに有料で当面予約をして、ご指示を得ると良いだけである。特性不安が高く抑うつ度が強いクライエントは概して過度に周囲に依存する傾向=対人依存型行動特性が強く、自分の思いがかなわないと怒りの感情で接してくる。それも自分の仕事の都合をつけたり民間のCounseling機関に有料で予約をすればよいのに、A機関に予約をしていながら態々Dに予約してくる攻撃的な衝動に駆られるのである。そのような全体像がある場合、若き心理師には、そもそも心理師を思う配慮がなければ、仮に予約がとれたとしても良好な信頼関係が形成されないし、一回二回のCounselingで境界例的な傾向は変容を来す継続的なアプローチができる訳がないからである。まず緊急に変容する必要があるのは、クライエント自身であることは間違いはない。周囲の親族に怒りを表出しても気質の理解がなければ怒りは収まらないだろう。気質や性格は変容に導くことは難しく理解し受容に導くことが必要である。変えられるのはご自分の行動である。若い心理師が訪れる機関Ⅾでは管理職の大らかさが救いの鍵となる。しかしながら特に、資格をもった心理師にケースやクライエントの対応を丸投げしたり、相談室所属の職員が協力的でなかったり、守秘義務を厳格にとらえすぎて重箱の隅をつつくような指摘をし続ける限り機関Dの相談室には明日が見えてこない。

 若い心理師へのスーパービジョンでは短時間で上記のような仮のケースを踏まえて認知行動の解決に導くプロセスを辿ることがある。

見通しが立たない状況下で生き残る法

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