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逆転移と似て非なる関係性を見極める [心理]

心理臨床過程で明瞭に認識すべき関係性の一つに転移と逆転移がある。逆転移は戒めるべきという見解と、逆転移関係性にあることに気づき、クライエントの自己成長に資する関係とすべきという見解がある。自身は、当初、逆転移関係に陥ることへの恐さから前者を厳しく戒めてきた。特に身近な相談員の方の対応を観察し、クライエントの自己成長を妨げていることが顕著な時は、その思考法を堅持してきた。


覆いをとること・つくること―〈わたし〉の治療報告と「その後」

覆いをとること・つくること―〈わたし〉の治療報告と「その後」

  • 作者: 北山 修
  • 出版社/メーカー: 岩崎学術出版社
  • 発売日: 2009/11/06
  • メディア: 単行本
耳の傾け方―こころの臨床家を目指す人たちへ

耳の傾け方―こころの臨床家を目指す人たちへ

  • 作者: 松木 邦裕
  • 出版社/メーカー: 岩崎学術出版社
  • 発売日: 2015/06/12
  • メディア: 単行本
しかしながら、最近になり、心理臨床過程で、転移感情に加え、逆転移感情に基づく関係性の変化に気づきはじめた時、一方で、そのことをしっかり自覚して心理臨床家がその自分のカウンセリングのプロセスとして切り替えることができることが確実ならば、現にクライエントの自己成長支援に寄与している場合に限り、転移感情、逆転移感情の活用をある程度許すべく柔軟にとらえることが必要と考えるようになった。

 最近、クライエントの支援要請に応じて、クライエントの心理支援を行う機会が増えた。しかしクリニック臨床や学生相談をしていた時のように1週間に一度又は、2週間に一度、面接が構造化されている訳ではなく、時に1か月以上の期間を開けて支援要請を受けることがある。勿論、定期的に対応をする面接構造に越したことはないが、例えば、第一回目の面接に保護者対応をし、保護者の意識の変容に導いた後で、家族関係に間接支援を行いながら、IPであるクライエント本人の心理面接への動機付けに導く機会がある。しかしながら、その面接は、ある意味では、一発勝負で、その面接でクライエントの動機付けにうまくいかないと二度と来て下さらなくなる危険がある。そこで、慎重に対応することになるが、あまりにこちらが固くなってしまうとその固さがクライエント本人に伝播してしまい、心を解くアプローチから遠ざかることになる。そこで、初対面のクライエントに対しては、ラポールを深めるプロセスを歩むために、或る程度、Counselor側が、自己開示をすることがある。カウンセラーのことを短時間の間に知って貰わなければ、自分を開示することも難しくなる心理的防衛が働くのは自然なことである。その時、話しやすいという気持ちに傾いて下されば、幸いである。その意味でクライエントの転移感情に加え、Counselor側の逆転移感情を、クライエントの隠れた気持ちへの気づきや自己イメージの想起、本当はどうあると良いかという根源的な欲求に根差す行動の方向性に気づかせることを妨げなければ、その範囲内での転移感情や逆転移感情の活用は、Counselingのプロセスを促進する意味で必要なのではないかと考えている。

 しかしながら、あくまでこのプロセスは、Counselingや心理療法を心理臨床経験で積み重ねてきた中で可能となりうる特殊な「技芸」であり、そのプロセスを予見し、クライエントの行動変容や自己成長に導くことができなければ、直ちにストップする必要がある。これは大きな意味で、傾聴を妨げる要素(ブロッキング)であり、事柄や気持ちの傾聴が難しければ、共感はもとより、受容(アクセプタンス)も難しくなることは当然の理となる。クライエントの気持ちや感情を共有することが難しければ、それをCounselorの中で感じて、ぴったりとした言葉や表現で伝え返す=リフレクトすることは、難しくなる。即ち自己一致したままで、クライエントにフィードバックすることが難しいため、心の深い部位で感情を共有することは先ず難しいのではないかと思う。そして、そのプロセスを生理学的な変化について考察すると、筋緊張が解かれるリラグゼーションには至らず、そしてリラグゼーションの過程は深まらず、弛緩集中時に顕れる脳波は、少なくともAlpha波優位から遠ざかると思われる。

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