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陸上 男子4×100mリレー決勝 [学び]

映像を繰り返し見た。第一走・多田選手(住友電工)のロケットスタートは、今回優勝したイタリアチームよりも速く、二走にバトンを渡そうとしたが、二走の選手が許可された枠内でバトンを受け取らなかった。ジャマイカ女子チームは、少し待ってバトンを受け取り金メダルを獲得した。



 





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「攻めた結果」との弁明もあるようだが、リレーは、単独走ではなく、バトンをゴールまで送り届ける基本を失念し、バトンを必死に渡そうとした第一走への配慮に第二走の選手が著しく欠けていた。それ以上でもそれ以下でもない。


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  リレー侍の油断によるミスを防ぐのは、選手各個人であることはもとより、コーチの役割でもある。選手同士はもとより、コーチが選手とのコミュニケーションがとれていなかったことを示唆するものである。仮に一走走者がバトンを受け渡す時に減速する傾向にある場合、そのことを念頭に置き、二走走者がスタートを切るように100分の何秒の微調整する必要がある。そしてパスが許容された枠内でバトンの感触を確かめたと同時に加速する必要がある。最悪の事態を想定しそのような内容を助言するのもコーチの役割である。スタート直前、第二走の走者が単独で練習する映像を拝見したが、「日本チームは、絶対にミスをしない」という思い込み(イラショナルビリーフ)を防ぐためにも、むしろ行動療法的にバトンが手元に届く練習をしておくべきであった。

 「五輪金の秘策とは?-クローズアップ現代+(NHK)」を拝見し「絆のバトン」を繋いできた歴史を知ることができたが、撮影で多忙の中、各選手と連絡を取り合い練習に導く時間があると良かった。今回は、ベテラン選手がメンバーにない中、その役割を担うの陸上リレーキーマン=五輪強化コーチであった。

 今回無観客の中でレースを行う運びとなったが、本来ならば、専ら4×100のために安くはないチケットを購入した方が多数おられるはずである。国民の期待を胸に今後のレースを認知面と行動面を視野に入れつつ変容に導く中で、慎重に進めて頂けると日本チームのバトンの歴史は再び繋がるのではないかと思う。但し4走者の方から、今後も攻め続けるとのコメントがあったが、守りと攻めるは表裏一体でその当日の個々の体調と心理状態が顕れた走りの状態から微細なバランス調整ができるよう互いの状態を把握しながら瞬間的に判断し行動に移行する必要がある。対立物の統一という弁証法的視点から攻めと守りの関係を捉える必要がある。攻めか守りかという問題の立て方ではなく、攻めも守りも統一して捉えていく必要がある。技術かメンタルかという問題提起もあるが、心技体という言葉に現れているように技術もメンタルもと一体化させて捉える必要がある。それを各選手だけではなく、1走から4走までの選手が共感的理解を通して共有できるよう、グループの心理に高めていく必要がある。

 今回は、9秒95~10秒01までベストタイムを叩き出した実績があった。1度でも9秒台を出せば、決勝に進むための対等な闘いができると思われたのだろう。しかし本当の闘いは、いつでも9秒台に近いタイムを個人レベルでも出せる力が心技体ともに備わっている必要があった。2年前、9秒98から9秒97のタイムが当時日本記録として出た時があったが、「当分破られないだろう」と感じたのではないだろうか。実際に日本人の中では破られなかったのでコロナ禍の中、その時々の身体の違和感を感じた際、決勝のレースを回避したりされたこともあったのだろう。しかしながら日本の中でも日々、闘いは進んでいて今季9秒95が出た。もう日本の中では「大丈夫だろう」そして他の選手も直ちにそのタイムを抜くことは難しいと感じたのではないか。そこで五輪代表を選抜する日本選手権で勝利すればという判断に移行したのだろう。結果10秒台で勝利する結果となり、日本選手権の着順とこれまでの経験も加味しながら選抜メンバーが選ばれた。1380通り~の組み合わせのパズルを解くこととなった。

 しかし100メートル決勝のレベルは、10秒12だったと記憶する。優勝したイタリアの選手は、速報タイム9秒79、結果として9秒80、準決勝での中国の選手は、9秒83だったと記憶する。優勝候補の米国チームが3位以内の着順に入れず、タイムでも拾われず、決勝を逃す経緯の中で、日本のタイムは全体の8位だったと記憶する。その中でバトンパスは大丈夫だからタイムを挙げていけば良いと思ったのだろうか。1走選手の事前練習の映像で感じられた。しかし省みると100メートル予選の時点で各選手の判断で、9秒を出せた人がおられたかと言えば、皆が10秒台だったと記憶する。大切なことは、過去1度9秒台を出した経験があることではなく、出そうと思えばいつでも9秒台を出せる状態に導く力を備えているかということまで、コロナ禍の中でも世界のレベルは上がってきたということである。人間の判断は過去の記憶に左右されるし、今シーズンの大会のベストタイムを踏まえて、各国のチームの力を推察するのだと思う。しかし当初予想した米国チームに加え、複数の他国の選手が思った時に9秒台を出せる状態、少なくとも10秒12未満のタイムを出せる状態に準備することができたのだと解される。

 他方で日本の選手が日本選手権で争うレベルは、10秒15~10秒2以上のタイムであったと記憶している。過去に1度9秒台や10秒01を出した経験があるからといって、東京五輪2020の決勝に参加するために最低限必要なタイムが出せる状態に導いた方が日本には今回はおられなかった。コーチを含め日本の選手の認知枠にあるレベルと実際の世界のレベルとの間で解離が生じていた。その解離を埋めるものがリレーでのバトンパスだったのだろう。

しかし更に微細に各人の認知を推察すると、先ず決勝レースに出てくるであろう米国をはじめとする他国のバトンパスに向けられていて、自分自身はもとより、自分の所属するチームの振り返りには(内的な方向に)意識が向いていなかったのではないかと推察される。その理由は、過去、銀メダルを取った経験から、「次は金を狙うしかない」という思考に転じ、要求水準が過度なレベルに到達する中で、それに至る内的なプロセスと技術を埋め合わせるための相互理解と合意形成、加えて具体的なパスの練習を積み重なて来られなかったのではないかと推察する。

 金メダルしかないと目標を設定していまうと、その時々の心の状態や身体の状態に合わせた微調整が難しくなる。何故なら交感神経が優位となり、不安緊張状態が嵩じて、脳波もベータ波優位となり、過緊張状態として瞬間的な判断が求められる場面で、弛緩集中状態で観られるアルファ波優位の状態で生まれる全体を捉えた中での閃きが生まれることができなくなってしまう方向に導かれるからである。その意味で目標設定は、プロセスの中で設定していく必要がある。これはサッカー日本代表チームの監督と選手達の思考にも共通することだと思う。

 9秒95のタイムを持った2走の選手が、直近の日本選手権で五輪代表に初めて選ばれた1走の選手や他の選手に対して、「自分の体調に合わせ自分の進んだ所までバトンを持って来るのが当然」という慈愛願望欲求が少しも心の中に隠れていなかったと言えば如何だろう。しかしチームの中で大切なことは、自分の体調だけではなく、相手の当日の体調、当該レースの様子を瞬間的にとらえ、バトンを受けるタイミングについて微調整を試みる必要があるのではないか。それは、3走の選手だけではなく、4走の選手にも言えることではないかと思う。因みに予選では3走の選手がリードを奪ったが、4走の選手が4着のチームにかなり迫られていた。


 コロナ禍の中で開催される東京五輪もあと数日となった。他の競技に参加する選手達も結果期待ではなく、効力期待の観点から各自のベストパフォーマンスを発揮できる状態を大切にして欲しいと思う。これまでの練習の積み重ねと実力を以てすれば、結果がついてくるはずである。金メダルを取ることは、心の中に秘めていれば、良いと思う。大切なことは、個々人及び、チームのベストパフォーマンスを発揮する状態に導くことだと思う。そのためにも共感的理解を旨に弛緩集中状態に導くことが必要で、その状態に導けば、自然と「ゾーン」と呼ばれる変性意識状態の中で、奇跡の瞬間が訪れるはずである。日々ご自分の更なるパフォーマンスの向上を目指し自分を超えようと努力しているアスリートの方々の健闘をコロナ禍の感染予防とともにお祈りいたします。


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【追記】

上記の見解は、Olympicathleteに述べられたものであって、一般組織、企業等には、個別的に適用することはできません。

勤務日や研修日ではない、休暇中の個人的関わり等、個別の場面で法則は異なりますのでご注意願います。

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