追悼：名将 木内幸男監督 [学び]
名将 木内幸男元監督(89）が天に召された。
DVD映像で蘇る高校野球不滅の名勝負 vol.7 2003年夏決勝常総学院VS東北 (ベースボール・マガジン社分冊百科シリーズ)
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木内流子供の力の引き出し方―「できない子供」はひとりもいない
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茨城県取手二高や常総学院を率いて甲子園全国制覇を春夏計三回成し遂げた木内元監督が天に召された。思えば、木内幸男監督の笑顔は、味方のみならず相手チームの心も笑顔にしてしまう不思議な力をもっておられた。 特に記憶に残るのは、取手二高を率いて、桑田・清原を擁するPL学園と戦った第66回夏の甲子園全国大会決勝。名将は、甲子園球場で行われた行進も揃わないチームの心をしっかり掴みながら指揮をして見事全国優勝を成し遂げた。茨城県訛りの言葉を操りお道化た雰囲気を醸し出し味方のみならず相手の心も掴んでしまう「木内マジック」。その後プロ野球選手として活躍した桑田真澄投手は、「何故あのような、リラックスした態度を貫いた相手チームに負けたのだろう」と首を傾げながら、取手二高の石田投手の家に泊まり掛けで訪問し人生修行に出かけたことは後の有名な話である。桑田投手は、翌年夏の決勝戦で宇部商業高校に4対3で勝利し、全国制覇を成し遂げた。あの試合も玉國監督率いる宇部商業高校の4番打者藤井選手に苦しめられながらも清原選手がホームランを含む複数安打に加え、四番清原の前の打席に立ったキャプテンがサヨナラヒットを打ち当時中村監督率いるPL学園 桑田投手を全国優勝に導いた。PL 学園は、桑田・清原を擁しながら春の大会決勝で伊野商業に負けている。桑田投手は、2年生の夏の大会で取手二高に負けた後、「木内マジック」を学ぶべく当時の取手二高のチームと過ごした貴重な体験がその後の人生に大きな影響をもたらしたと推察している。
次に記憶に残るのは、2003年夏の甲子園大会で常総学院を率いて、ダルビッシュ擁する東北高校と戦った試合である。ダルビッシュは当初ノーヒットピッチングで試合を進めていた。木内監督は、途中まで選手に「眠ったふり」をしているように見守りながら4回以降のダルビッシュのピッチングの乱れを見逃さなかった。自身の淡い記憶だが、通常のセオリーならば、バントを指示する所、ヒッティングを指示してそれが成功し、攻略の糸口を切り開いたことを記憶している。今や大リーグでもサイヤング賞の候補に上がるまでの大投手となったが、抑えこまれるだろうという恐怖心やあきらめを抱く当時の常総学院の選手達に一筋の光と攻略の気づきを導いた。結果4対２で常総学院に惜敗し深紅の大優勝旗は白河の関を超えることができなかった。まさに木内マジックがチームの心を掴み一体化させ、上手の手から零れた水を掬い出す中で、一瞬の心の隙をつく集中力を生み出し、後に日本代表として第2回WBC決勝で韓国から勝利した後、大リーグで活躍する投手を攻略して全国制覇を成し遂げた。
全国制覇を成し遂げ甲子園を沸かせた名将は、数々おられるが、記憶の中では、やはり木内監督が一番目に想起される御一人と思う。御引退後、御高齢の道を歩まれる中で暖かな眼差しで選手達を見守っておられた。そればかりではなく全国の高校野球を見守って下さったのだと確信している。「木内マジック」は、子供達を自己成長に導く暖かな光で満ち溢れていた。高校野球のために人生を捧げられた名将木内幸男監督に、数多くの心に残る試合と奇跡を見せて戴き有難うございました。どうかどうか安らかにと。謹んで心からご冥福をお祈り申し上げます。
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