心理士(師)の責任感覚 [心理]
Counselingを依頼され、実際に担当していた若い心理士が他の心理士にリファーする時、ときに丸投げをするケースがある。当該心理士の臨床に対する基本的態度が顕れる。
スーパービジョンのはじめかた:これからバイザーになる人に必要なスキル (シリーズ はじめてみよう 2)
- 作者:
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2019/08/24
- メディア: 単行本
増補改訂 心理臨床スーパーヴィジョン―学派を超えた統合モデル
- 作者: 平木 典子
- 出版社/メーカー: 金剛出版
- 発売日: 2017/07/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
保健・医療・福祉専門職のための スーパービジョン:支援の質を高める手法の理論と実際 (新・MINERVA福祉ライブラリー)
- 作者:
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2018/06/20
- メディア: 単行本
高齢者ケアにおけるスーパービジョン実践―スーパーバイジー・スーパーバイザーの育成のために
- 作者: 野村 豊子
- 出版社/メーカー: ワールドプランニング
- 発売日: 2019/09/01
- メディア: 単行本
産業現場の事例で学ぶ カウンセラーのためのスーパービジョン活用法
- 作者:
- 出版社/メーカー: 金子書房
- 発売日: 2019/10/10
- メディア: 単行本
臨床心理スーパービジョンの際には、若い心理士や資格を取得したばかりの心理師から様々な質問をされ対応するが、スーパーバイザーの立場にある者は、もう役に立たないと思っていたかつての様々な経験が役に立つことがある。スーパーバイジーから提起された課題の中で、心理士同士のケースの対応法がある。特に同じ組織で少数の心理士がケース対応している場合は、異なる曜日に勤務しているため、ノートの記述のやり取りで報告を受けることがある。きちんと自分のケースを対応していれば、現状を報告することで足りるが、時にクライエントとの信頼関係に揺らぎが生じた時、それをリファーを受けることがある。きちんとした業務をする心理士(師)であれば、これまでの対応についてポイントをまとめた対応とクライエントの認知、現状での問題点、心理検査結果(投影法、作業検査法、質問紙法等)を鍵のかかる場所を支持してCLの同意又は集団的守秘義務の中でケースをリファーすることが通常である。年度末から年度初めの引継でもそのような場面が生じるが、酷いケースでは、全く現状報告なしに年度途中、突然、今月いっぱいで辞めますというメッセージが一言書かれていたことがあった。年度途中でお辞めになる場合には、余程の事がないと行わないと解しており、自身がリファーされる側であれば、これまでのCounselingの対応状況やアセスメント情報を上記に掲げた情報を軸に慎重に情報を収集し、クライエント像をイメージングする。しかしながら、年度途中でお辞めになる割には、またどこかでお会いした時は宜しくお願いしますとメッセージが書かれていたこともあった。これまでのケース対応について、簡潔にまとめた記録もない場合、宜しくと言われても如何とも判断しがたいと感じたことがあった。このような相談が若い心理士(師)から受けることも増えてきたが、結果的に引き継ぐことになったクライエントの心理支援にくれぐれも支障をきたさないよう、自身が対応したケース経験に基づき感じた率直な感想を踏まえ伝えるようにしている。この点、クリニック臨床の時は、主治医が媒介となっているためカルテ情報と主治医の診断や薬の処方等を踏まえて以前の担当者の対応が分かるように構成されている。
ノートのやり取りをしていた時、もう一人の担当者の方が明らかに対応困難状態に陥っていて、結果的に宜しく頼むといったメッセージを受けたことがある。丁寧な方は、勤務日が異なる場所から態々時間を合わせて電話をくださったりしたケースもあるが、誠に拙劣な対応と言わざるを得ないケースもあった。ノートに一言宜しくお願いしますと書かれただけで、次回、うまく繋がらなかった時には、怒りを含んだ投げやりのメッセージがなぶり書きのように書かれたケースに関してどうしたら良いかということで心理士(師)の相談を受けたこともある。省みると明らかに前担当の対応ミス、特に学童期時代の対応から生じた継続した問題であり、明確にケースが移行したとは言えないにも関わらず、前担当又は媒介した心理士(師)の思い通りにいかないことに怒りの感情を含んだ投げやりな態度でメッセージが記されていることも現実にあった。クライエントやその保護者にとってみれば、あたかもたらい回しにされた気分になるのではないかと率直に思うが、そもそもケースをリファーする時は、対応記録とアセスメント記録をクライエントや保護者の同意を得て、又集団的守秘の中で、鍵のかかる場所を媒介にして情報共有することが必要である。それがそもそも担当のはじめから終わりまで、クライエントの主訴解決に向けた心理支援として目の前のクライエントに寄り添うということではないかと思う。
率直に若いCounselorの失礼な対応に直面し、いかなる心理臨床教育機関で、いかなる教育を受けてきたのか、ひいては、親御さんから人としてどのような対応を貫くべきかその基本姿勢を教えられたのかを率直に聴きたいと思う今日この頃である。
いずれにせよ、構造化されたテストバッテリーによるアセスメント手法と構造化された心理臨床技法を修得していれば、上記のような問題は生じにくいのではないかと思う。構造化されたチェックリストを読み取る力もなく、困難事例に寄り添う対応法も学習せず、ただクライエントやその保護者の怒りの感情をはじめネガティブな感情を恐れている様子が伺えるのである。そのようなケースのリファーの仕方をしていては、当方に難がなくても、心理士(師)以外の担当者に対して、Counselorに対する信頼が揺らぐ要因となる恐れがある。そのようなことにも配慮するため、この度国家資格が作られたと思われるが、それにしても上記の拙劣なリファー姿勢があることに辟易した気持ちになるのも致し方ないかもしれない。最近、クリニックの心理師がケースをリファーできる心理師の要件についてTwitterで呟いている場面に遭遇したが、そもそもそのような呟きは現実に自分の目の前のケースを解決できない状況に直面していることの裏返しを投影するものである。資格取得して間もない方にありがちなこのような呟きはsupervisor関係にあると明示している大学教授と主治医に迷惑をかける結果となることを顧みる必要がある。しかしながら、クライエントには何も罪はない。偶然時を共にした曜日が異なる心理士に代わって、クライエントの主訴解決に導く姿勢を貫くことが大切であるとスーパービジョンの中で自らの体験を踏まえて伝達している今日この頃である。
コメント 0