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心理職における職務専念義務の問題 [学び]

SCは、勤務日が連日異なることが通常だが、それぞれ定められた時間の中で職務専念義務を負う。

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  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2016/03/02
  • メディア: 新書

 その反面、勤務日、勤務時間以外の時に連絡を受け、対応を求められることがある。生命・身体の重大な安全に関わらない、事務手続きのために求められることがある。求める側は、それぞれのスケジュールに従って、求めており、通常は、その期待に応えたいと思う。しかしながら、他勤務日、他勤務時間に連絡を求められたりすることがあるが、それは、他勤務日の雇用契約に基づく職務専念義務を逸脱する行為である。勿論、連絡ができれば、管理職にことわり連絡することもある。しかし、その当日の一瞬一瞬に集中すべき時に、他勤務への連絡を求めると集中が途切れてしまうことにより見落としがあるといけないと思う。確かに時間がある場合があるが、できれば、連絡事項があれば、当該勤務日の勤務時間内に伝えてほしいというのが率直な願いである。勤務日に面接予約等がない場合は、他の連絡は可能となるが、厳密には、待機時間であり、勤務時間である。ゆえに、適度な緊張感をもって待機時間を過ごす必要がある。自身は、面接の振り返りや、活動記録の整理、そして、相談室のミニ広報等の原稿に充てたり、行動観察に充てたりもするが、スクールによっては、なかなか、声がかかりにくい時がある。それは教員の方がそれぞれお忙しく、勤務時間帯に合わせて面接予約を入れにくいケースもあるだろう。しかしながら、SCの勤務時間帯にちゃんと面接予約をコンスタントに入れて下さったり、教育相談部会を開催して、SCの発言時間を十分に確保してくださる配慮をしている組織もある。

他方で、勤務時間内で十分にSCと連絡をする時間があるはずにも関わらず、他の仕事を優先して、SCが帰宅後または帰宅途中に携帯に連絡があったり、他の勤務日に自宅研究室に複数回着信を入れてくるケースがある。しかしそれは、本来であれば、勤務日及び勤務時間に合わせて連絡を下さるのが原則であり、職務専念義務の裏返しである。確かに対価を伴う仕事として重い負担を求められるという考え方もあるが、それは勤務日、勤務時間内に限られるということが原則である。

 ところで、勤務日は原則として、年度初めに該当する曜日を選択し、所属長と合意形成する。しかしながら、該当日ではない日に要請がかかる時がある。それは他勤務の所属長の了解が得られたうえで、慎重に検討することであるが、時に、当然にして他の曜日に研修会を入れてくるケースがある。加えて、当然その機会に出ないと情報の取得や更新など不利益を被ることが推察されるという背景もある。勿論、できるだけ、契約の相手方の要望に応じて対応する試みはするが、他方で、あまりにも他の曜日を複数回、選択することを求められる場合には、他勤務の選択した原則の曜日との関係でバランスを失してしまうことになる。それにも関わらず、特に週3日以下の契約の中で、他勤務の曜日に対応してほしいと要請するのは、立憲主義の前提にある個人の尊厳の根元にある自由意思に反する傲慢な求めではないかと思う。勤務日でなくとも、介護や子育てをしている労働者もいるだろう。特に障害があれば、それ相応の寄り添いが必要になる。障害者支援を制度的に保証する法律は、差別を禁止する法律とともに平成28年4月から施行されている。被災された親族や友人のために、被災地に緊急支援に赴いた心理士もおられる。それに加え、質の高い労働を再生産をするために心理研修やご家族との積極的な休養を選択している方もおられる。主治医に面会し健康管理をしている方もおられる。特に複数回の勤務日や他の勤務時間を求めてくる場合は、一定のラインを超えた場合には、他に守るべきもののために、明確にノーを言わなければならない時がある。

 それで結果として何か不利益な判断が生ずるならば、各種法文に規定される不利益取り扱いに該当することにつながるのみならず、労働者の自由な意思決定を侵害する強要(223)の構成要件に該当し公益通報事由となると法律の専門家から指導を受けている。ゆえに、自身が仮に雇用者となる場合には、くれぐれも自己決定を侵さないように注意したいと考えているという健全な考え方をお持ちの雇用者の方には、感謝申し上げたいと思う。それに加えできるだけ、職務専念義務が確保できる交通手段も選べるに越したことはない。労働者の勤務日、勤務時間以外の事情を十分にくみ取って下さる方、そして、時間の有効活用に導いて下さる雇用者の配慮に対しては、一層、集中力をもって児童生徒、保護者支援のために立ち向かう強い動機づけになると考えるのが人として自然な考え方ではないかと思う。それぞれの勤務日、勤務時間の職務専念義務を果たす、面接予約、部会の設定等、そのための御協力を戴く中で、生命や身体に関する重大事故を未然に防止する教育相談体制を構築する必要がある。それは学習で多忙な児童生徒に、その合間をぬって、予防面接、臨床心理面接の機会を与えること、そのために具体的な導きを行うことではないかと思う。既に派遣元から児童生徒の心と生命を守る施策に関する通達が派遣先に送付されているのに何故か各担当心理士の手元には届いていないというケースもある。担当者の手元に時間の余裕をもって届いていなければ、送信していない状態と同視せざるを得ないという見方もある。加えて、授業時間だから心理面接ができないという固定的な考え方では、児童生徒の心そして生命を本当の意味で守ることは難しい。

 おそらく、この問題は、心理職の国家資格制度が導入されても、概ね変わらないと推察している。

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  • 作者: 弁護士ドットコム
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