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精神力動的視点による統一的理解の努力 [心理]

心理臨床の対象の膨大な範囲を統一的に理解する視点に、精神力動的視点がある。

子どものこころの理解と援助: 集団力動の視点から

子どものこころの理解と援助: 集団力動の視点から

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2013/09/23
  • メディア: 単行本

スクールカウンセリングの基礎と経験

スクールカウンセリングの基礎と経験

  • 作者: 馬場 謙一
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本


医療心理臨床の基礎と経験

医療心理臨床の基礎と経験

  • 作者: 福森 高洋
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2010/04/19
  • メディア: 単行本

 最近、児童生徒の対応に際し、特定の科目がわからず、なじめない、その結果、不登校につながる恐れがあるという主訴を何人もの児童生徒、保護者から聴いた。その折、本児童生徒の認知特性から、理解しにくい要素を推察し、それを支援体制の中で補う中で、不登校の予防に役立てている。学習意欲が湧かないと訴える生徒の中で、知識が細かくて覚えられないという訴えが多くある。特に英語科目は、覚えるべき単語が多すぎて、限りがないという言葉を聴き、妙に納得してしまうときがある。ひと昔前は、算数や数学が苦手という児童生徒が多かったように記憶するが、今では、国語や英語が難しいと訴える子供が増えている。特に国語は、登場人物の気持ちを推察したり、定型的な漢字を記憶したり、断片的な情報を文章にまとめたりという、知覚の統合に関する認知機能やそれと連動する書字に関する運動機能、そして、抽象的な言葉をイメージして記憶する言語理解等の働きが苦手で学習を必要とする日常生活場面で苦戦を強いられている方が多い。むしろ単純な公式を組み合わせて理解する算数や数学が容易という児童生徒が多くおられるようにも思う。特に視覚優位の児童生徒にとって、図形の認識が容易であり、楽しいという声が聴かれる今日この頃である。

 心理臨床の学習においても、同様のことが言える。CPの学習を始めたころは、心理臨床大事典を入手して、その膨大な範囲に驚いた記憶がある。どうすれば、膨大な範囲を統合的に理解することができるのか、特に実践が伴う領域であるため、厳密にいえば、全てのケースが異なるクライントの心に寄り添う中で、それを統一的に理解することは難しく、不可能であるという印象があった。しかし、福祉、産業臨床の後、医療やスクールカウンセリング、学校心理臨床の中で、さまざまな年齢層のクライエントと向き合わせていただくなかで、各々の発達段階において、共通したものがあり、発達段階を超えても、人間の心の葛藤の対処と反応、情動反応と身体症状への影響といった精神力動的視点からすると、非常にシンプルに鳥瞰し心理現象を振り返ることができるように感じるようになった。もちろん、本来異なる心理現象を金太郎あめのように同質のものとして、見なすことは避けなければならないが、心理現象を一定の軸からシンプルにとらえようとする視点があると、統一的視点からクライエントの行動や症状を理解しようとする動機が促進し、対処法が明確に絞り込まれるばかりではなく、学習の場でも、生理学的基盤と連動し分かるという感覚のもと、学習の積み重ねにおいて自己効力感が促進するように思う。そして、統一的な視点としては、精神力動的な理解が重要である。

 今から10年以上前、学生臨床を始めた頃、同期の優秀な女性カウンセラーから、「私の専門は精神力動的理解による心の臨床です」と自己紹介されたが、当時は、あまりぴんと来なかった自分がいた。しかしさまざまな臨床経験を積んでくると、さまざまな臨床実践の中で出会ったクライエントの行動や症状、心理現象について、統一的な理解を求める衝動に駆られてくる。そこで、一つの基本軸を与えてくれるのが、精神力動的な視点である。過日、神保町を歩き、古典的な名著を入手し、心理臨床における自分の視座を再確認した時、先人に対する感謝の気持ちがあふれ出てきた。

 このたび、実存主義のテキストを読む機会があり動機づけられた。サルトルが飲料水の樽上で演説している写真をみた。哲学は、自己決定を促進する契機となる。


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