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エンプティチェアの力 [健康]

 時間限定の心理面接でエンプティチェア(空椅子)を用いた。空椅子とは、ゲシュタルトの技法で、空の椅子にクライエントの重要他者(親等)をイメージの中で座らせ、未解決の課題を解決に導くために思いを表出してもらう技法である。クライエントは、伝えることができなかった思いを実際に伝えることで、相手の当時の思いを感じることができるし、相手の立場から自分自身に語りかけることで、相手の気持を体感することでき、気づきが深まる。
 空椅子の技法で、クライエントが自ら未解決の思いを語った時、恥じらいなどを感じながら控えめに語ることがしばしある。しかし、その背後には、もの凄く強い怒りのエネルギーなどが潜伏していることがある。怒りを表出する直前に、強い恐怖やあきらめを感じた時、怒りのエネルギーを抑圧してしまう。その時から、重要他者に対し、自分の気持が出せなくなると私は解している。クライエントが控えめに語る時には、「本当の気持を伝えて」と効果的な沈黙を用いながら問いかける。すると、いつの間にか、クライエントは、当時出せなかった怒りや悲しみを表出する。このようなプロセスを経ないと自己抑制が強いクライエントが、パーソナリティ変容に導く突破口を開くことは難しく、悩みを同じ次元での半ばエンドレスに繰り返すことになる。さらに、その中で、効果的沈黙を用いながら、気持の表出を促進するよう促すと、語れなかった気持を相手方に対して語りだす。
 空椅子使用の注意点は、先ず、クライエントが、未解決の感情をうみ出した場面に向き合えるかどうか、心のエネルギーや体調、自我の強さなど、あらかじめクライエントに技法の趣旨をガイダンスしておき、面接開始時に確認することが必要である。クライエントが自分で解決したい動機が高まってきている時は、クライエント自ら積極的に技法を行うよう提案してくることがある。
 次に、相手との和解に至ることができれば幸いだが、時間限定のカウンセリングでは、無理をしない方が安全である。今の気づきを深めるために、クライエントに現状の課題を示唆し、次の目標を示すと先を見通せるし、カウンセリングルームの外で、自然と自己解決に至る場合もある。なお、表情の観察、傾聴、確認、共感といった基本姿勢に気をつけることも重要である。
 空椅子を行うと、クライエントの抑圧していた感情が表出され、イメージ上であっても、相手に受けとめてもらえた感覚が得られることを通じて、感情表出をあきらめていた状態から解き放たれる。
結果、クライエントの内部によどんでいたエネルギーが解放されることで、たとえば、みるみるうちに、弛緩された表情を取り戻すように、心身の健康を回復する方向に向かうのである。特に病態の重いクライエントは一気に解決しようとはせずに、段階を経て解決に至るように導く姿勢が重要であり、また、境界例のクライエントは、相手の立場に立つことが困難な場合がある。
 この度の心理面接では、みるみるうちにクライエントの表情がときほぐれてきたことには、古典的技法の効果に改めて気づかされた。自身の場合、巷のゲシュタルトセラピストよりも、使用頻度が多い技法ではないかと思う。

 

成長のための効果的方法―ゲシュタルト・セラピー、誘導イメージ、神経言語学的プログラミング

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  • 出版社/メーカー: チーム医療
  • 発売日: 1990/09
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