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SCの新しい処遇制度とスーパービジョンの中で直面する教師の抱え込み症候群 [心理]

SCの臨床スーパービジョンでよく耳にするのは、教師の抱え込み症候群への対応である。

臨床心理学 第19巻第3号ー心理専門職必携 ピンチに学ぶスーパーヴィジョンガイド

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  • 出版社/メーカー: 金剛出版
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ロールプレイによるカウンセリング訓練のかんどころ

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精神科臨床サービス 第5巻1号〈特集〉新人に何を教えるか,どう教えるか

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  • 出版社/メーカー: 星和書店
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  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
抱え込み症候群の責任は、要支援生徒を抱え込んだ教師にある。連日忙しい心理師は、むしろ心を休める機会を賦与されたと思うと良いと伝えている。その待機時間の機会に、心理教育の時間に充てると、今後の活動で、役立つとおもわれる。
臨床心理士資格を取得してSCとなった方が公認心理師資格試験を経て国家資格を取得した人が数多くいる。当初よりSC は、特別地方公務員として処遇されていたが、公務員法の大改正により、来年度から会計年度任用職員として採用されることになる。会計年度任用職員の基本的考え方は、もうすでに公認心理師法が制定され、第一回公認心理師試験が行われた頃、総務省で作成され、最近になって初めて目を通した時は、その内容から推察されるSC の新しい処遇に正直驚いたが国の財政上の問題が背景にあると説明がある以上、致し方がない面があるかもしれない。しかしながら当該文書に公認心理師という文言はなかったため、当該文書を作成した担当者の方に直接問い合わせた所、「公認心理師」という資格の存在については、ご存じなく当方から電話口を通じて情報提供することとなったことを鮮明に記憶し記録にも残している。少なくとも国の部署で会計年度任用職員という新しい制度を作られるために精一杯だったのだと思うが、臨床心理士に加え、任用資格として重要な位置を占めてきた公認心理師資格の存在をせめて知る中で、新しい制度に関する文書を作成してほしかったというのが実のところである。

 特に医療機関や学生相談に加えSCとして永年の心理臨床経験を経た臨床心理士有資格者が公認心理師資格を日々の臨床業務の中で受験を強いられ、ようやく晴れて国家資格取得したのに、いざ第二回公認心理師試験合格発表の翌年には、会計年度任用職員としての制度が作られて、さまざまな点でSCをはじめ、特別地方公務員としての条件が必ずしも維持されない現実に直面すると何のために難しい扉を何度も苦労して開いてきたのだろうかと思う時がある。ましてや一種指定校で研鑽を積み臨床心理士と公認心理師を同時に所得され概ね一年間、実務経験を積みようやく、SCの要件に当たるようになって応募する段になってこれまでとは、条件が異なる立場になるというやるせない感情をお持ちの方も多いのではないかと思う。この会計年度任用職員の制度に関する文書の内容には、財政上の事情が背景にあるとはいえ、日本国憲法上、法令上さまざまな問題が隠されていることは、法律の専門家からご指導を頂いているが、この点については、別稿で触れることにしようと思う。




 ところで、若いSCからスーパービジョンを求められる機会が増えてきた中で、特にSCの方が感じていることとは、スクールの現場での教師の抱え込み症候群である。自身が十数年前から触れてきた問題意識とさほど変わりない。スクールの中で一定の経験を積んできた教師は一定のプライドをもって、日々の職務を遂行している。特に自らが担任となる児童生徒には、すべての責任をもって対応するプロ意識があると感じている。他方で、自らの自己評価の低下を恐れるあまり要支援生徒を抱え込む傾向がある。専門的な知識を踏まえて抱え込むならまだよいのだが、児童生徒の心理的特性を適切に把握することなく、また児童生徒や保護者の心理対応が適切に行うことが難しい中で抱え込んだ末、要支援生徒を苦境に追い込み、保護者からのクレームが相次ぐ結果となることが未だに重大な問題となっている。そのような抱え込み症候群はSCをはじめとした心理専門職に対応への指示を仰ぐことはおろか、心理面接のリファーも行う関係力も希薄であるため、緊急度の判定も難しくなる。

 SCの場面で、児童生徒が様々な症状を抱く中で、身体疾患や行動症状、自傷行為、虐待等、どのような局面にあるかアセスメントするためには、SCによる面接が不可欠である。それにも関わらず行動観察や周辺情報の把握、抱え込み症候群の症状を持つ教師からの聴取による間接的な支援だけでは、よほどのことがない限り直接的な情報を得ることは難しい。クライエントである児童生徒、保護者の苦境の把握、適応状況への支援から遠ざけることになる。仕方なく質問紙を関連する養護教諭に渡して児童生徒の状況をとらえようとすることがある。勿論、管理職の了解を得て行ったものであるが、それに対して何故先に担任に伝えなかったのかと訴えてくる担任もおられると若い心理師有資格者であるSC から時折聴くことがある。教師が抱え込むのであれば、せめて心理師の国家資格を取得してから行うことを検討すると良い。そうでなければ、心理師としての資格を有するSCの専門的知識なしに素人考えで担任教師が児童生徒や保護者の心理にアクセスしようとすれば、子供の認知に負担をかけることになる。結局の所、子供の心理状態が悪化し症状がこじれた段階でようやく心理職に放り投げるというパターンがあまりにも多い。自分でも長年の心理臨床経験の中で幾度となく体験してきたが、こじれた程度によっては、いかに心理師や臨床心理士の有資格者でも若いSCでは解決に導くことが難しくなることで、結局は子供たちが担任の抱え込み症候群という重篤な疾患の被災者になる。最も酷いケースでは、私的な集まりに1万円以上の会費を設定し、参加希望者を募りその会合に参加しなければクライエントをリファーしないばかりか、業務中、挨拶はもとより視線すら合わせないという訴えも聞こえる。日頃のリファーがなければ全体のケースにも影響し、次年度の更新要件にも影響してくることになる。スーパービジョンの過程で若い心理師から聞こえてくる事柄はいずれも、前近代的な思考が公教育の中で蔓延っている現実があるようだ。児童生徒が突然登校事例を振り返るとSCが臨床心理学的な観点から適切にアセスメントしながら助言をしていたにも関わらず、その方針に従わず、優柔不断な恣意的判断を繰り返している場合がある。記録を振り返っても名前はもとより事実と異なる内容がword processorで記されていることから推察されることもあることも聞かれる。このようなケースに対しては、法律の要件に該当しなくても公益通報を行う必要がある。十五年以上前から感じていることだが、子供達の心の健康の保持と自己成長を支援するベテラン、中堅SCはもとより、若いSCのためにも早めに心理面接の予約を入れてほしいと改めて願う今日この頃であるが中々時間が懸る事案では、スーパービジョンのプロセスのため、児童生徒の生命の安全のために様々な予防措置をとる方法を助言せざるを得ない。

   特に行動観察とチェックリスト診断、上司や担任教諭への聴取等で、言語化しにくいクライエントの緊急度が低いと判断されても、心理師の資格を有しない担任教諭が自己判断で生徒と面談をした後に、症状が悪化し緊急度が高くなる場合がある。何のために会社組織や学校組織にプロの心理師(Counselor)を派遣しているのか。素人診断は禁物である所以である。特に同じ部署や同じクラスで二人以上の要支援者が発生する場合には、要支援者(児童生徒)の特性のみならず担任教諭の教室運営に問題があることに気づく必要がある。

 このような場合、心理師は、所定の相談室で所定の時間に待機していれば、履行の提供を行っていることになるため、平素より声かけをしなくとも十分に任務を果たしていると若い心理師にはスーパービジョンの場で助言している。もっとも、教育現場で無資格で支援している人もいる。その多くの方は人柄が良く挨拶を交わし子供にも慕われているが、中には挨拶もできずに状況報告もせずに要支援生徒を抱え込んでいる者も稀に存在する。そのような者は、顔が見えなくとも後姿で態度が分かる。偶然通り懸った際に後姿で明らかに良好な変容をもたらす子供の支援には断じて向かない人柄と感じることがあった。




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